「Intel Outside」、アウトソースの道を選ぶのか?:半導体王者に迫られる選択(2/2 ページ)
業界観測筋によると、Intelは今後5〜10年以内に、次世代半導体プロセス技術の開発を終了し、新しいウエハー工場の建設も中止して、他の多くのライバル企業と同じように、これらの重要なサービスを専業ファウンドリーに依存していく見込みだという。ただしIntelからは、この件に関する正式発表はまだない。
時価総額がIntelを超えた、ファブレスのNVIDIA
企業やコンシューマーの需要がCPU中心から、CPU、GPU、ソフトウェア、専用アプリケーションなど、より広い範囲へと移行したことで、市場の方向性が変わってきた。PC市場の王者であるIntelは、“より下”の存在の勢いに押されつつある。Intelは、クラウドコンピューティング、5G、AI、自動運転車など、より有望な分野に注力市場を転換しようとしてきた。
IntelのSwan氏は、「われわれは今、家庭から自家用車、都市、病院、工場、学校まで、あらゆる場所がますますスマート化している世界を目の当たりにしている」と語った。「こうした新しい世界では、われわれのビジネス機会は、CPUだけでなく、より多くのコンピュータに搭載される、より多くのIntelのシリコンである」(Swan氏)
だが、市場は納得していないようだ。Intelは、プロセス技術開発でTSMCに後れを取っていて、売上高を多様化するために大規模な投資を行っているにもかかわらず、依然としてPC市場に大きく依存している。Intelの売上高は好調だが、成長率は低下してマージンの圧迫が深刻化しており、その結果、同社株の評価は低下している。
売上高では世界最大のチップメーカーであるにもかかわらず、Intelは、はるかに小さい(はずの)ライバルであるNVIDIAの市場評価を押し上げた投資家にとって、もはや魅力的ではないのかもしれない。2020年7月27日の株式市場開始時点(米国時間)において、Intelの時価総額は2150億米ドルだった。Intelの株価は7月24日、7nmプロセス開発の遅れを明らかにした後、16%急落した。
2019年、Intelの株価は変動し、時価総額は2568億米ドルから2143億米ドルの範囲で推移していた。同社をウォッチしてきた金融アナリストの多くは、同社の株価を「ニュートラル」「ホールド」「アンダーパフォーム」のいずれかに格下げしており、Intelがプロセス技術に関する課題を解決し、売上総利益率の目標である60%台半ばを維持できる収益成長モデルに落ち着くまでは、株価の格上げはしない方向である。
それとは対照的に、NVIDIAの時価総額は2510億米ドルに達し、Intelを上回った。TTM(Trailing Twelve Months)売上高は118億米ドルと、Intelの790億米ドルよりも小さいが、株主からは、より良い投資見通しと見なされている。
半導体業界を救うのは、Intelの投資家の仕事ではない。もしIntelが製造をアウトソーシングする方向に舵を切った場合、Intelの投資家たちはその決断を支持するのだろうか。Intelよりも高い評価を得たのは、ファブレスであるNVIDIAだ。
製造をアウトソースすることは、“勝利の戦略”のようにも聞こえる。ならばIntelが、自分たちもそれにならえと考えるのも不思議ではない。ファウンドリーはほぼ一つの地域に集中しているので、米国やその他の国・地域にとってはあまりよくないのかもしれないが、投資した分だけの成果を確実に得られるのではないだろうか。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- NVIDIAの時価総額がIntelを上回る
NVIDIAの時価総額が、Intelを初めて大きく上回り、2510億米ドルに達した。NVIDIAの株価は記事執筆時点で420米ドル前後の高値をつけ、会計年度の初めから現在まで79%成長している。 - NVIDIAが解説するディープラーニングの基礎(前編)
エヌビディアは2018年4月24日、ディープラーニングに関するセミナー「NVIDIA Deep Learning Seminar 2018」を東京都内で開催した。本稿では、セッション「これから始める人のためのディープラーニング基礎講座」から、ディープラーニングの歴史や概要、学習の流れについて紹介する。 - 半導体産業はコロナに負けない! 製造装置市場の動向を読み解く
コロナ禍にあっても半導体産業は強いようだ。特に半導体の微細化は止まるどころか、むしろ加速しているようにすら見える。今回は、製造装置市場の動向を、過去も含めて読み解いてみたい。 - 2019年の半導体売上高ランキング、Intelが首位奪還
Gartnerは2020年1月14日(米国時間)、2019年の世界半導体売上高が、2018年から11.9ポイント下がって4183億米ドルになったと発表した。ベンダー別の売上高では、Intelが2016年以来3年ぶりに首位を奪還した。 - IntelがHabana Labsを買収、Nervana製品の立ち位置は?
Intelは2019年12月16日(米国時間)、AIアクセラレーター関連の新興企業であるイスラエルのHabana Labs(以下、Habana)を約20億米ドルで買収したと発表した。これは、驚くべき動きである。Habanaは、Nervanaの競合だからだ。