検索
ニュース

東京工大ら、Ka帯衛星通信向け無線ICを開発シリコンCMOSプロセスで実現

東京工業大学とソシオネクストは、標準シリコンCMOSプロセスを用い、Ka帯衛星通信向け無線ICを開発した。従来は6〜9個のICを用いていた通信機能を1チップで実現している。

Share
Tweet
LINE
Hatena

受信機2系統を内蔵、二偏波MIMOと周波数多重を選択可能

 東京工業大学工学院電気電子系の岡田健一教授や白根篤史助教らによる研究グループと、ソシオネクストの研究グループは2020年8月、標準シリコンCMOSプロセスを用い、Ka帯衛星通信向け無線ICを開発したと発表した。

 開発した無線ICは、インダクターの相互結合を利用した低雑音増幅器(LNA)と干渉波を打ち消す回路を採用することで、低雑音かつ高線形性で干渉波に強いトランシーバーを実現している。しかも、ダイレクトコンバージョン方式を用いることで、従来のスーパーヘテロダイン方式に比べ部品点数を削減することが可能である。

 無線ICは、65nmのシリコンCMOSプロセスを用いて試作した。3×3mmのチップサイズに送信機1系統と受信機2系統を集積している。従来は6〜9個のICを用いていた通信機能を1チップで実現した。

 内蔵した受信機は、内部のスイッチを切り替えることで「二偏波MIMOモード」と「周波数多重モード」のいずれかを選択できる。二偏波MIMOモードでは、右旋円偏波と左旋円偏波の2種類を利用すると、最大2倍の通信容量を実現できる。周波数多重モードでは、キャリア周波数が異なる2つの変調信号を同時に受信することができ、通信帯域幅を拡大して通信容量を増やすことができるという。


受信機は、内蔵したスイッチで「二偏波MIMOモード」と「周波数多重モード」を選択できる 出典:東京工業大学、ソシオネクスト

 研究グループは、試作した無線ICの通信特性を評価した。この結果、送信機は27〜31GHzで動作し、飽和出力電力は19dBmであった。シンボルレート150Mbaudの場合に256APSK変調を用い、データレート1.2Gビット/秒を達成。一方、受信機は17〜21GHzの周波数範囲で動作し、雑音指数は5.0dB、線形性IIP3(3次入力インターセプトポイント)は0.2dBmを達成した。


65nmのCMOSプロセスを用いて試作した無線ICのチップ写真 出典:東京工業大学、ソシオネクスト

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る