岡山大ら、強誘電体の傾斜したバンド構造を初観測:大容量FeRAMなどの開発に期待
岡山大学と高輝度光科学研究センター(JASRI)、産業技術総合研究所(産総研)、東京工業大学、パリサクレー大学の共同研究グループは、電気分極に由来する強誘電体の傾斜したバンド構造の観測に初めて成功した。
人工シナプスへの展開にも期待
岡山大学と高輝度光科学研究センター(JASRI)、産業技術総合研究所(産総研)、東京工業大学、パリサクレー大学の共同研究グループは2020年7月、電気分極に由来する強誘電体の傾斜したバンド構造の観測に初めて成功したと発表した。
強誘電体は、自発的な電気分極によって電荷を蓄えることができるため、コンデンサーの基幹材料として用いられている。近年は、電気分極によって電荷の偏りが生じ、ダイオードのような電気の流れ方をすることが分かってきた。不揮発性メモリ「FeRAM」などへの応用でも期待されている。これらの動作原理は、「傾斜したバンド構造にある」といわれてきたが、これまでは実証されていなかった。
共同研究グループは今回、電気分極が単一に配向をした強誘電体薄膜を精密合成し、大型放射光施設「SPring-8」のBL47XUビームラインに設置された実験装置を用いて、深さ分解測定を行った。
今回用いた装置は、X線を約1μmに集光、試料にピンポイント照射することが可能で、局所領域で試料表面から深い部分に向けて八方に飛び出す光電子の放出角度(深さ情報)を、ワンショットで検出するための広角対物レンズを組み合わせた構造となっている。これによって、局所領域における光電子の精密な測定を短い時間で行えるようになった。
開発した測定手法を用い、電気分極が単一に配向をした強誘電体薄膜に電圧を印加した。これにより、強誘電体に傾斜したバンド構造があることを、初めて実証することができたという。
共同研究グループは今回の成果について、「より高速で大容量のFeRAMの開発に弾みをつける」とみている。さらに、強誘電体の特異な電気の流れ方はシナプスの情報伝達と似ており、人工シナプスへの応用にも期待している。
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