筐体や衣服などとの融合を目指す新世代の配線板技術:福田昭のデバイス通信(262) 2019年度版実装技術ロードマップ(70)(2/2 ページ)
今回は、異なる製造技術によって付加価値を高める技術「ストレッチャブル配線板」「コンフォーマブルエレクトロニクス」「テキスタイルエレクトロニクス」の3つを取り上げる。
伸縮が可能、3次元の一体成形、織物の電子化という3つの方向
「ストレッチャブル配線板」とは、折り曲げと伸縮の両方が可能なプリント配線板を意味する。折り曲げが可能な配線板としては「フレキシブル配線板」が普及している。ただしフレキシブル配線板は伸縮性を備えていない。
フレキシブル配線板に伸縮性を付加する場合には、伸縮と折り曲げが可能な絶縁基材と、伸縮と折り曲げが可能な導体配線が必要となる。絶縁基材の代表には熱可塑性ポリウレタン(TPU:Thermoplastic Polyurethane)、導体配線の代表には波線(馬蹄)型銅配線がある。課題としては、伸び縮みの繰り返しによって導体配線の抵抗率が増加することが挙げられる。
「コンフォーマブルエレクトロニクス」は、ストレッチャブル配線板技術をベースにした、3次元形状の成形が可能なエレクトロニクスを指す。ポリカーボネート(PC:Polycarbonate)のような硬い支持層(キャリア層)とストレッチャブル配線板を一体にして成形する。
3次元の一体成形工程は、ストレッチャブル配線板に電子部品を搭載した後の工程となる。成形は加熱を伴うので、配線板の伸縮による部品や配線などへの影響を考慮しなければならない。一方、成形後は伸縮がないので、伸縮による劣化を考慮せずに済む。既に乗用車の内装用エレクトロニクスで一部、実用化されている。
「テキスタイルエレクトロニクス」は、半導体や受動部品などで構成する回路を大面積の繊維(テキスタイル)に埋め込んだエレクトロニクスを意味する。「E(electronic)-テキスタイル」「スマートテキスタイル」とも呼ばれる。
絶縁基材には織布やニット、不織布などが利用される。配線には、インクジェット印刷による導電ペーストや、カーボンナノチューブによる導電繊維、導電性を備えた糸などが使われている。
テキスタイルエレクトロニクスは人間が肌着やサポーターなどとして着用する衣服に電子的機能を持たせたものとみなせる。言い換えると、汚れたら洗濯し、乾燥させて再利用する。この洗濯による劣化は大きな課題となっており、使い捨てを前提とせざるを得ない場合が多い。
(次回に続く)
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