検索
特集

リモートワークでPC市場に変化の兆しスマホと連携するケースも?(2/2 ページ)

PCのメモリ需要は、再び拡大しているのだろうか。5G(第5世代移動通信)対応スマートフォンは、リモートワーカーにとって頼りになるデバイスになるのだろうか。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

スマホとディスプレイ/キーボードをつなぐ


Enterprise Strategy GroupのアナリストMark Bowker氏

 リモートワークでは、VDIを使用するかしないか、デスクトップPCなのかノートPCなのかといった点について、問う必要がない。Enterprise Strategy GroupのアナリストであるMark Bowker氏によると、リモートワーカーやIT事業部門は、リモートワークを行っていく上で、スマートフォンをモニターやマウス、キーボードなどにドッキングさせるというアイデアに乗り気だという。

 同氏は、「私は、自分のスマートフォンを使ってデスクトップで全画面表示している。もし会社やオフィス環境に戻っても、同じデバイスを使うことができるため、オフィスのモニターさえあればよい」と述べる。

 スマートフォンは、個人的な使用またはオフィスでの使用の両方のケースで必要とされる唯一のデバイスとして機能することが可能だ。パンデミックにより、多くのビジネスユーザーにとって、スマートフォンが最も重要なデバイスであることが明らかになった。Microsoftはこうした状況に対応すべく、WindowsとAndroidのアプリケーションを組み合わせた、2画面デバイス「Surface Duo」を発表した。これは、デバイスのさらなる小型化とWebベースのアプリケーションへの移行が進んでいることを示している。


Microsoftの「Surface Duo」 画像:Microsoft

 Bowker氏は、「それでも作業用マシンには、ユーザーの期待に応えられるだけの十分なメモリが必要である。企業環境では今後、ユーザーの勤務時間外におけるデバイスの使い方に沿って、ゲーミフィケーションがもっと応用されるようになるだろう。さらに、5G導入により、デバイスは、アプリケーションがクラウドを介して実行されるとしても、より多くのローカルメモリが必要になる見込みだ」と述べる。

 実際、スマートフォンメーカーは、ユーザーエクスペリエンスの向上や、ローカルでの大容量ファイルの処理、高解像度映像のストリーミングを実現できるよう、さらに多くのDRAMやフラッシュストレージを追加している。メモリ性能も、ワークステーションと同じようにマルチタスクに対応できるよう最適化されている。

メモリベンダーの動き


UFSベースのMCP(Multi Chip Package) 出典:Micron Technology

 メモリベンダーは、5G対応スマートフォン向けのDRAMとフラッシュストレージで先手を打っている。例えば、2020年初め、Micron Technologyは低電力のDDR5(LPDDR5)を用いたUFS(Universal Flash Storage)のマルチチップパッケージ(uMCP)のサンプル出荷を開始した。このパッケージは、ミッドレンジのスマートフォンに搭載できるように作られている。また、このパッケージを用いれば、スマートフォンはAR(拡張現実)やVR(仮想現実)など5Gベースのアプリケーションに対応できるようになる。MCP(Multi Chip Package)はDRAM、NAND型フラッシュメモリ、オンボードコントローラーを組み合わせたパッケージである。これはスマートフォンによくみられるアーキテクチャで、消費電力とメモリフットプリントを抑えられるため、デバイスの小型化につながる。

 他の例として、Samsung Electronicsが2019年に発表したモバイル機器向けの12Gビット LPDDR5 DRAMは、LPDDR4Xからの大きな飛躍を示した。このDRAMは、AIアプリケーションを動かす5Gスマートフォンをターゲットとしているが、PCのようなマルチタスキングもサポート可能だ。

 Samsung Semiconductorでモバイルおよびコンシューマーメモリ担当シニアプロダクトマーケティングマネジャーを務めるStephen Lum氏は、「ハイエンドのスマートフォンは、より複雑なアプリケーションや、より高度な仕様のプロセッサ、ストレージ、DRAMが求められるマルチタスキングを実現できる。LPDDR5はこれまでで最速かつ最も容量の大きいモバイルメモリである」と述べた。

 Samsungは、リモートワーカーをサポートするため、メモリ需要がデスクトップPCからノートPCにシフトしていることに既に気づいている。Lum氏は「既存のスマートフォンは、ノートPCに匹敵するストレージとDRAM密度を備えている。従って、スマートフォンを生産性のあるデバイスとして利用する能力は、オペレーティングシステムと利用可能なアプリケーションでしか制限されない」と述べた。

 ストレージでは、Samsungは既にスマートフォン向けeUFS(embedded UFS)として1TB品を提供している。キオクシアも、3次元フラッシュメモリを用いたUFSを開発済みだ。

 スマートフォンは今や、コンピューティング、メモリ、ストレージを備えた汎用デバイスとなっているが、Enterprise Strategy GroupのBowker氏は、ワークステーションに対する需要は今後も続き、大量のグラフィックが伴うアプリ、CPUの高速な処理性能、工学設計や医療画像などのユースケースに向けて最適化されたメモリが求められるようになると述べた。

【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る