今後の「iPhone」、注目はアンテナモジュールか:iFixitの分解を基に考察する(2/2 ページ)
iFixitがAppleの最新機種「iPhone 12」の分解レポートを公開した。同レポートを基に考察すると、今後のiPhoneの注目ポイントはアンテナモジュールではないだろうか。
今後の注目はアンテナモジュール
5Gスマートフォンの展開で、より興味深いのはトランシーバー以外のハードウェア部分かもしれない。例えば、ビームフォーミングアンテナだ。
iFixitの分解レポートによると、アンテナモジュールはUSI(Universal Scientific Industrial Shanghai)製とのことだが、筆者はこの写真を見て、実際はQualcommの「QTM525」なのではないかと思った。QTM525は、5GモデルにおけるAppleの競合製品の1つだが、そう断定する前にiFixitの解説をざっと見てみよう。
筆者は、iFixitの「(iPhone 12 5Gアンテナには)Appleらしい光沢がある」というコメントが気になった。
確かに光沢があるが、これはAppleのアンテナに限ったことではない。光沢は、エポキシ樹脂成形材料に金属製のコンフォーマルEMIシールドコーティングが施されているために生じたもので、どのメーカーのスマートフォンのRFコンポーネントでもよく見られる。
ただし、Appleの場合、フラッシュメモリチップにこのコーティングを施す仕様が他とは異なる。東芝やSamsung製のメモリコンポーネントは、SamsungやLGモデルでは光沢のあるEMIシールドは施されていない。しかし、AppleはiPhone用コンポーネントに光沢のあるEMIシールドを施すよう要求している。EMIシールドは、小さなスペースに繊細で複雑な高速デジタル電子機器と一緒に、繊細で複雑な多くの無線システムが詰め込まれる場合に必要とされる。Appleは、ストレージデバイスにも電磁干渉絶縁層を付加したい考えとみられる。この推察については、別途報告したいと思う。
筆者はiFixitチームの分解レポートを信頼しているので、ライブ配信でリアルタイムに分解の実況解説をするためにiPhone 12の発売を待って列に並んだりはしなかった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、今のところ筆者のライブ視聴者は2匹の無気力な犬だけだ。
アンテナに話を戻すと、iPhone 12のモジュールデザインは、LGやSamsung、MotorolaブランドのLenovo製スマートフォンに搭載されているQualcommのQTM525モジュールと同一のもののように見える。iFixitの分解レポートによると、iPhone 12モデルは、実際にはAppleの部品番号が付けられたUSIブランドのコンポーネントであることが分かる。USIは、iPhone(および他のブランド)向けにWi-Fi/Bluetoothモジュールソケットを提供している。その際、Cypress SemiconductorやQualcommなどのチップセットを使って、Wi-Fiやその他のワイヤレスモジュールのシステム統合を行っている。
そのため筆者は、iPhone 12に採用されているUSIのアンテナモジュールは、QTM525モジュールに使われているQualcommの2個のチップを使っているのではないかと推測する。
内製の5Gモデムの搭載はさすがに間に合わなかったため、iPhone 12では、AppleはQualcommのモデムとトランシーバーを採用する必要があった。ただ、これまでに発表された内容からすると、AppleはRFチェーンの最も端の部分であるビームフォーミングアンテナの部分で、何か他とは異なる技術を活用しているのではないかと思われる節もある。そしてこの部分は、5G時代のモバイル機器の性能を確保するための重要な領域でもある。
さらなる分析が必要であることは間違いないだろう。
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