2020年の製品のシリコンは“ほぼ自前”、Appleの開発力:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(48)(3/3 ページ)
2020年は大型商品の発売が相次いだ。特にApple製品は、“自前のシリコン”搭載が目立ち、Appleの開発力を表すものとなっている。
5nmチップを搭載
図4は2020年10月に発売されたApple「iPad Air(第4世代)」である。こちらはM1ではなく、モバイル向けとして5nmで製造される「世界初」(Apple)のプロセッサとなった「Apple A14 BIONIC」が採用されている。電源ICとセット化され、電力性能、処理性能ともに最適化されたものになっている。基板の形状やサイズも図1のMacBook Airとさほど変わらない。ストレージメモリの数や端子用のブリッジチップが少ないだけである。
図5はA14 BIONICを採用した2020年10〜11月に発売となったAppleの最新スマートフォン「iPhone 12」の様子である。
10月に「iPhone 12」「iPhone 12 Pro」がリリースされ、11月に「iPhone 12 mini」と「iPhone 12 Pro Max」が加わった。内部の骨格となるプロセッサと電源ICはシリコン型名を含めて同じもの(ただしDRAMの容量は異なっている)。差は電池容量(サイズや形状)、カメラの構成(LiDARや望遠レンズの有無)、「Taptic Engine」(触覚タッチ)やスピーカーのサイズとなっている。
自ら最適化したシリコンを次々と生み出すApple
図6に、2020年11月に発売されたAppleのスマートスピーカー「HomePod mini」の外観と基板を示す。こちらは2018年に発売された「HomePod」の小型版だが、プロセッサや電源ICが最新のものに置き換わり、高度な「Siri」を用いた操作ができるものになっている。チップは、べったりと放熱材で覆われていて、写真から分かるようにチップ型名は読み取れないだが、チップ開封によって内部が明らかになった。Appleのスマートスピーカー用の新プロセッサが活用されているのだ!
Appleの開発力のすさまじさが分かるだろう。スマ―トフォン向けのA14、MacのM1だけでなく、スマートスピーカーやApple Watchなど向けにも、続々と自らの手で最適化し、セット化したシリコンを生み出しているのだ。
表1は、2020年に発売された主なApple製品について、表面カバーを外したところ、メインのプロセッサのパッケージ、シリコンの写真(若干ぼかし処理している。鮮明な写真はぜひ弊社にお問合わせを!)をまとめたものである。
Intel「i4004」が発表されて50年
2020年に発売されたAppleの多くの製品は、Apple自前のプロセッサで構成されている。そして後半、ほぼ全てが5nmの最先端プロセスで製造されたプロセッサに置き換わった。5nmを採用することで電力性能も処理性能もさらに磨きがかかったものになった。現在も、3nm、2nm、1nm……と、微細化は続いている。
「次の10年」は確実に動いている。コロナ禍でも世界は決して歩みを止めていない。むしろ技術の世界では、進化が加速したものもあるくらいだ。
2021年は、世界初のマイクロコントローラーであるIntelの「i4004」が開発されて50周年を迎える節目の年(i4004は1971年に発表された)に当たる。「次の50年がスタートする年」という認識で2021年を見ていきたい。テカナリエは2021年1月から、テクノロジーとしての半導体やシステムを解析する会社としての従来事業に加え、大型新入社員を迎え入れ、テクノロジーとアートを融合する事業を開始していきます。今後もさまざまな情報を多角的に提供していきます。
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