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日台が連携、2nm世代に向けた「hCFET」を開発200℃以下でSi層とGe層を積層

日本と台湾の国際共同研究グループは、2nm世代に向けた積層型Si/Ge異種チャネル相補型電界効果トランジスタ「hCFET」を開発した。

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大幅な集積化とさらなる高速化を可能に

 産業技術総合研究所(産総研)と台湾半導体研究中心(TSRI)をそれぞれ代表とする日本と台湾の国際共同研究グループは2020年12月、2nm世代に向けた積層型Si(シリコン)/Ge(ゲルマニウム)異種チャネル相補型電界効果トランジスタ「hCFET(heterogeneous Complementary-Field Effect Transistor)」を開発したと発表した。

 電界効果トランジスタ(FET)は、微細加工技術の進展により、高い性能と低消費電力を実現してきた。22nm世代になると「FinFET」と呼ばれる3次元的なゲート構造を持つFETへと進化。さらにその発展型としてGAA(Gate All Around)構造が登場してきた。その先にあるのがCFET構造と呼ばれる技術で、n型FETとp型FETを上下に積層した構造である。面積を大幅に縮小でき、高速化が可能となる。


FET構造のロードマップ 出典:産総研

 産総研はこれまで、Siのn型FETとGeのp型FETを混載したCMOS技術の研究開発を行ってきた。一方TSRIは、2nm世代以降の3次元チャネル実現に向けた微細プロセス技術の開発に取り組んできた。そこで両社は、それぞれの強みを生かすため国際共同研究プロジェクトを2018年に立ち上げた。

 同プロジェクトは、Si層とGe層を積層したSi/Ge異種チャネル集積プラットフォームの開発に向けて、200℃以下で高品質のSi層とGe層を積層できる低温異種材料接合技術(LT-HBT:Low Temperature Hetero-layer Bonding Technology)を開発した。積層とエッチングのプロセスを全て低温で行えるため、Si層やGe層に対するダメージが極めて少なく、高品質のSi/Ge異種チャネル集積プラットフォームを実現できるのが特長だ。

 この製造プロセスはこうだ。まず「ホストウエハー」と、ホストウエハー上にGeをエピタキシャル成長させた「ドナーウエハー」を用意する。ホストウエハーとドナーウエハーにはそれぞれSiO2絶縁膜を堆積して表面を活性化。その後、200℃で直接接合する。

 そして、ドナーウエハーのSi基板やBOX絶縁膜および、Si層を順次除去する。最後に、東北大学が開発した中性粒子ビームエッチング(NBE:Neutral Beam Etching)を用いてGeを均一に薄膜化する。これによって、Si/Ge異種チャネル積層構造を実現した。この技術は、hCFETの作製プロセスを大幅に簡略化できる上、さらなる多層構造にも対応できるという。


低温異種材料接合技術を用いたSi/Ge異種チャネル積層プロセス工程 出典:産総研

 研究グループは、開発したSi/Ge異種チャネル積層プラットフォームを用いて、hCFETを作製した。SiとGe層を同一のチャネルパターンで形成し、Si層とGe層の間にある絶縁層を取り除くことで、ナノシート状の積層型チャネル構造とした。SEM鳥瞰(ちょうかん)図により、GeとSiチャネルが露出しているのを確認した。

 この構造に、チャネル全体を覆うようhigh-kゲート絶縁膜(Al2O3)と金属ゲート(TiN)を堆積させ、GAA構造の「Si n型FET」と「Ge p型FET」が上下に積層されたhCFETを実現した。TEM断面図により、上部にGe層、下部にSi層がチャネル幅50nm程度のナノシート状で積層していることが分かった。TEM EDX分析からも、これらの構造を確認することができた。

 さらに、単一のゲートでこれら「n型FET」と「p型FET」を同時に、トランジスタ動作させることに成功。LT-HBTによる異種チャネル積層化が、2nm世代のトランジスタ技術として極めて有効であることを実証した。


Si n型FETとGe p型FETを上下積層した3次元異種チャネル相補型電界効果トランジスタ(hCFET)の画像 出典:産総研

 今回の研究成果は、産総研デバイス技術研究部門先端CMOS技術研究グループの張文馨(Chang Wen Hsin)研究員を代表とする日本チーム(産総研と東北大学)と、TSRIの李耀仁(Lee Yao-Jen)リサーチフェローを代表とする台湾チーム(交通大学、成功大学、?南国際大学、台湾大学、国立中山大学、逢甲大学、工業技術研究院、Hitachi High-Tech Taiwan)の国際共同研究グループによるものである。

 国際共同研究グループは、精度の高い異種チャネル集積プラットフォームの確立を急ぐとともに、海外を含む民間企業に対して、3年後をめどに技術移転を行う予定である。

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