高周波対応の車載PoC用小型ノイズ抑制フィルター:良好なインピーダンスの直流重畳特性も両立
TDKは2020年12月15日、高周波で高いインピーダンスを保持し、通電時のインピーダンスの変動も抑えた車載PoC(Power over Coaxial)用ノイズ抑制フィルター「MDF1005シリーズ」を開発したと発表した。
TDKは2020年12月15日、高周波で高いインピーダンスを保持し、通電時のインピーダンスの変動も抑えた車載PoC(Power over Coaxial)用ノイズ抑制フィルター「MDF1005シリーズ」を開発したと発表した。AEC-Q200準拠で、1.0mm×0.5mmと小型ながら、125℃での定格電流が400mAで、1000Ω以上のインピーダンスを実現。ADAS(先進運転支援システム)回路、BUSライン、テレマティクスユニット向けを主な用途として展開していく。
車載カメラの発展で高まる大電流化、高周波化対応を実現
LVDS伝送の車載カメラシステムでは、カメラの映像データ伝送と電力供給を1本の同軸ケーブルで行うことができるPoC化が進んでいる。ただ、PoCを適用した場合、映像データ伝送を行う信号ラインが誤って電源へ入ることのないように、ノイズフィルターが必要になる。また、車載カメラはその搭載数の増加に加え、高解像度化、高速伝送化も進行していくことが予想されるため、それに伴ってPoCラインは大電流化、高周波化対応も必須となるという。
今回発表したMDF1005シリーズは、高周波帯域で低損失を実現する同社独自のフェライト材を用いることでこうした大電流、高周波への対応を可能にしたとしている。具体的にはPoCの高周波帯域である700M〜2.4GHz周辺のアイソレーションおよび放射ノイズ対策に向けた製品で、1.0mm×0.5mmと小型ながら、125℃での定格電流が400mAで、1000Ω以上(900MHz時)のインピーダンスを実現する。
また、既存のチップビーズでは通電時、下図右で示しているように700M〜1GHz周辺で大幅にインピーダンスが劣化し、車載PoC向けフィルターに求められる信号損失の規格を下回ることになっていたが、MDF1005シリーズでは、通電時でもインピーダンスの変動が抑えられており、同規格を満たすことができるという。同社の説明担当者は、「高周波対応をしつつ、良好なインピーダンスの直流重畳特性も両立、さらにそれを1005サイズで実現した。車載PoCフィルターへの顧客のニーズに応えられる製品だ」としている。
なお、今回の製品は700M〜2.4GHzの高周波帯域(下図内、Coil3部分)を主な対象としたものだが、それ以下の帯域についても、下図内のCoil1の範囲は、同社が2015年に量産開始したインダクター「ADL3225Vシリーズ」で、Coil2の範囲は既存チップビーズでそれぞれ対応可能。この3つのインダクターを組み合わせることで、広帯域で高いインピーダンスを確保できるとしている。
MDF1005シリーズのサンプル価格は1個30円。2020年12月に生産開始し、月500万個の生産を予定している。同社は今後、MDF1005シリーズでのインピーダンスの拡充および、500m〜700mAなどの電流対応も進めていく方針だ。
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