九州大と関学大、高性能青色有機EL素子を開発:HDT-1とν-DABNAを組み合わせ
九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センターと関西学院大学の共同研究グループは、高い発光効率と色純度、素子耐久性を併せ持つ青色有機EL素子の開発に成功した。
高い発光効率と色純度、素子耐久性を実現
九州大学最先端有機光エレクトロニクス研究センターと関西学院大学の共同研究グループは2021年1月、高い発光効率と色純度、素子耐久性を併せ持つ青色有機EL素子の開発に成功したと発表した。
九州大学は、青色有機EL素子で課題となる発光効率や耐久性、材料コストなどを解決できる発光分子として、「熱活性化遅延蛍光(TADF)分子」を2012年に提案した。しかし、TADF発光分子の発光スペクトル幅が50nm以上と比較的広いため、ディスプレイ用途には適さないとみられていた。
そこで今回、九州大学の安達千波矢センター長らによる研究グループは、高効率で高速な逆項間交差速度を示す「スカイブルーTADF分子(HDT-1)」を新規に開発。これと、関西学院大学の畠山琢次教授らが開発した、発光線幅の狭い「DABNA誘導体(ν-DABNA)」の技術を組み合わせた。具体的には、HDT-1分子上で生成したエネルギーをν-DABNA分子へ移動させる「Hyperfluorescence機構」を用い、青色有機EL素子を開発、試作した。
試作した青色有機EL素子は、シングル素子で最大27%、タンデム素子で最大41%という高い外部EL量子効率が得られた。しかも、ELスペクトルは19nmと極めて狭い半値全幅を示した。さらに、初期輝度1000cd/m2における輝度劣化時間(5%劣化)は10時間(実用輝度100cd/m2では300時間)以上を達成するなど、高効率青色有機EL素子としては極めて高い駆動安定性を実現できたという。
研究グループは引き続き、TADF分子や青色蛍光分子、EL素子構造などの研究を進め、素子耐久性のさらなる向上などにより、次世代青色有機EL素子の早期実用化を目指す。
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