東芝、ボタンにも内蔵できるBLEモジュール開発:SASP技術でアンテナを一体化
東芝は、衣服のボタンにも内蔵できる小型の「Bluetooth low energy(BLE)モジュール」を開発、サンプル出荷を始める。独自のSASP(Slot Antenna on Shielded Package)技術を用いて実現した。
外形寸法は4×10mm、重さはわずか0.09g
東芝は2021年1月、衣服のボタンにも内蔵できる小型の「Bluetooth low energy(BLE)モジュール」を開発、サンプル出荷を始めると発表した。独自のSASP(Slot Antenna on Shielded Package)技術を用いて実現した。2022年の量産開始を目指す。
健康管理や運動分析などに用いるウェアラブルデバイスでは、収集したデータの送受信に、近距離無線通信規格の1つである「BLE」を活用するケースが多い。今後も、さまざまなIoT(モノのインターネット)機器の登場で、その応用範囲は拡大するとみられている。
東芝が開発したBLEモジュールは、スロットアンテナのほとんどをモジュール上面に配置するSASP技術により、アンテナ一体型のシールドパッケージを実現した。国内電波法の工事設計認証も取得済みである。外形寸法は4×10mmと極めて小さく、重さも約0.09gである。この形状は、衣服自体に組み込んだり、ボタンに内蔵したりしても気づかれないレベルだという。
開発したBLEモジュールには、Bluetoothの最新規格ver5.2に対応したNordic Semiconductor製Bluetooth IC「nRF52811」を採用した。プロセッサコア「Arm Cortex-M4」を内蔵しているため、Bluetoothプロトコルスタックの他、ミドルウェアやアプリケーションソフトウェアも動作させることができる。メインクロック用の水晶振動子(発振周波数32MHz)や低消費電力モード用の水晶振動子(同32.768kHz)および、電源周辺の受動部品なども搭載しており、外付け電池とセンサーを接続するだけで、Bluetoothによる送受信が可能になる。
同モジュールの主な仕様は、送信電力が+4dBmから−20dBmまで可変になっていて、受信感度は−96dBm(1Mビット/秒時)および、−104dBm(125kビット/秒時)である。動作温度範囲は−30〜+85℃、動作電源範囲は1.7〜3.6Vになっている。
【訂正とお詫び】外形寸法に誤りがありました。お詫びして訂正します。[2021年1月19日午前9時30分/編集部]
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