小型で低コストのCO2センサー、TDKが開発:コロナの影響で需要増の見込み
TDKは2021年1月8日、MEMSベースのCO2検出用ガスセンサー「TCE-11101」を発表した。EE Times Japanでも既に取り上げているが、ここではもう少し詳しく説明したい。
TDKは2021年1月8日、MEMSベースのCO2検出用ガスセンサー「TCE-11101」を発表した。概要は既報の通りだが、ここではもう少し詳しく説明したい。
TDKによれば、CO2センサーは、ガスセンサーの中でも要求が高いという。空調システムもCO2濃度を見てコントロールしていることが多く、自動車や食品検査、医療といったさまざまな分野でCO2濃度をモニタリングしたいというニーズが多いからだ。
現在主流のCO2センサーは、赤外線の吸収量を基にCO2濃度を算出するNDIR(非分散型赤外吸収)方式を用いている。ただ、この方式だと「赤外線の発光体(光源)、光学フィルター、受光素子といった部品が多くなり、どうしてもパッケージが大きくなってしまう」とTDKは説明する。もう一つ、H2(水素)濃度から等価的にCO2濃度を算出するeCO2(equivalent CO2:等価二酸化炭素)方式のセンサーもあるが、こちらはCO2そのものをベースにしているわけではないので、高い測定精度を出しにくいという弱点がある。
TDKは、こうした従来のCO2センサーのデメリットを解消すべくTCE-11101を開発した。「CO2に特化したセンサーとするため、当社が新たに開発した『ダイレクトCO2検出方式』を用い、CO2を直接計測できるようにしている。さらに、MEMSの素材から後段の信号処理まで全て社内で開発、設計した」(同社)
大きな特長として、小型かつ超低消費電力な点が挙げられる。外形寸法は5×5×1mmの28ピンLGAパッケージ。TDKによれば、普及しているNDIR方式センサーのサイズは30×15×7mm。TCE-11101はだいぶ小型であることが分かる。消費電力も1mW以下に抑えられている。検出範囲は400ppm〜5万ppmと広いため、さまざまな用途で使用できる。測定精度は±75ppm±3%だ。測定精度は、NDIR方式のCO2センサーに比べて大幅に高いわけではない。だが「小型で低消費電力、さらに温度センサーや湿度センサー、モーションセンサーといった他のセンサー素子とも組み合わせやすいといった利点が、TCE-11101にはある」とTDKは説明する。
I2Cのインタフェースを備えているので、開発もしやすい。また、センサーを駆動しつつキャリブレーションできる機能(バックグラウンドキャリブレーション)も備えている。
![](https://image.itmedia.co.jp/ee/articles/2101/22/mm210122_tdk02.jpg)
TCE-11101の特長。パッケージに開いている穴は、CO2を取り込むためのもの。「CO2の取り込みと、信頼性を高めるための機密性とのバランスを取りながら設計したパッケージ」(TDK)となっている 出典:TDK(クリックで拡大)
こうした技術により、NDIR方式に比べて小型で低消費電力、低コスト、そしてeCO2方式に比べて高精度に測定できるCO2センサーを実現した。TCE-11101用のソフトウェア付き統合評価キット「DK-11101」もそろえている。
TCE-11101のサンプル出荷は既に開始していて、量産出荷は2021年半ばに開始する見込みだ。価格は要問い合わせ。
TDKによれば、2021年におけるガスセンサー全体の市場規模は最大約9億2000万米ドルで、年平均成長率7.5%で成長するとみられている。その中で、今回ターゲットとしているCO2センサーの市場規模は、2021年は2億2000万米ドル、2024年には4億2000万米ドルになると予測されている。特に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、厚生労働省や経済産業省が室内のCO2濃度について1000ppm以下などと定めるなど、屋内のCO2濃度をモニタリングしなければならない機会も増えると考えられる。TDKは「2024年の市場予測の4億2000万米ドルのうち、屋内向けは半分以上を占めるとみられている。非常に大きなマーケットになると期待している」と述べた。
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