進化する義手、AI搭載で動きが大幅に改善:ユーザーのクセをつかむ
反復行動から学ぶAI(人工知能)で動く義手が開発された。この義手を装着すれば、手を失った人々は、握ったりジェスチャーしたりするといった行為を無限にできるようになる。
義手にAIを搭載
イラクやアフガニスタンでの戦闘で手足を失った米国人の数は1500人以上に及ぶ。そのうち数百人が四肢のうち複数を切断されたことに苦しんでいるという。精神的ストレス、うつ、不安神経症、そしてPTSD(心的外傷後ストレス障害)によって、身体的損害が悪化するケースも多い。
テクノロジーの発展によって、手足を失った人が身体機能や自立を取り戻すことができたならば、言葉では言い表せないほどの価値がもたらされるはずだ。そして今回、反復行動から学ぶAI(人工知能)で動く義手が開発された。この義手を装着すれば、手を失った人々は、握ったりジェスチャーしたりするといった行為を無限にできるようになる。
AI技術は、EMG(Elctromyography:筋電図)にのみ依存してきた従来の義手に比べ、義手を新たなレベルに引き上げた。EMGは、神経刺激に対する筋肉の電気的活動を測定することで手を動かすものだ。
新たな義手もEMGを活用するが、AIが追加されたことで動きが大幅に改善した。
この“AI義手”を開発したBrainRoboticsのプロダクトマネジャーで、規制関連のアナリストでもあるQing Zhu氏は「AI義手と従来型の義手の最も大きく違う点は、(AI義手では)AIアルゴリズムが日常的な義手の使用を円滑にすることだ。ユーザーは短いトレーニング時間で義手を使用できるようになる。捕捉されたEMG信号は義手をより精密に制御するために分析される」と述べた。
ユーザーがAI義手を使うには、ある程度のトレーニングが必要になる他、ユーザーが思い通りに義手を動かせるよう、筋肉からのインパルス(電気信号)などについても理解しておく必要があるという。
Zhu氏はAI義手の仕組みについて、「AIは義手に搭載されている他、当社が運営するクラウドサーバでも動作している。ユーザーのEMG信号は義手の中で処理されて、クラウドサーバに転送される。クラウドサーバには、“手の信号トレーニングのデータベース”があり、これによってユーザーの使用パターンや筋肉の制御パターンに適合した、手の制御モデルが作成される。初期の信号トレーニングが完了すると、義手はこの制御モデルに組み込まれる」と説明する。
Zhu氏は「アップデートが必要な場合、信号のトレーニングセッションを再度実施し、AI義手に新しいモデルをリモートで交換する」と付け加えた。
AI義手の機械学習(ML)機能は、ユーザーの反復的な使用パターンから徐々に学び、義手に組み込まれる知性を磨いていく。そのため、義手の制御はより密接にユーザーの癖やニーズと一致するようになる。
「AIアルゴリズムとMLを使って、ニュアンスと動きの類似性を捉えることで、AI義手の最良の制御を実現する」(Zhu氏)
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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