「適応型チップで変化の多い時代に対応」、ザイリンクス:新カントリーマネジャーが強調(2/2 ページ)
Xilinxの日本法人であるザイリンクスは2021年1月28日、オンライン記者説明会を開催し、2020年8月にカントリーマネジャーに就任した林田裕氏が同社の注力市場や戦略を説明した。
3つの注力市場と市況
Xilinxが注力する市場としては、データセンター、5G、オートモーティブの3つを挙げた。データセンター向けでは、アクセラレーターカード「Alveo」の製品ラインアップを拡充し続けている。5Gでは、RANのオープン化(Open RAN)に関するビジネスが加速していることから、このトレンドに追従する製品を強化する。Xilinxは2020年9月15日に、Open RAN向けのテレコムアクセラレーターカード「T1」を発表。林田氏は、T1の採用が多くなるのではとの期待感を語った。
Xilinxにとって自動車は、チップの出荷数が過去15年間で2桁の成長を遂げた、重要な市場だ。2020年に出荷したデバイス数は1億9000万個に達した。「従来の自動車メーカーやティア1サプライヤーだけでなく、自動車市場に参入して間もないスタートアップでの採用も増えてきた」(林田氏)。とりわけ、運転場面に応じてミリ秒単位で機能を入れ替える、ADAS(先進運転支援システム)向けの技術「Dynamic Function eXchange(DFX)」を、「機能ごとにチップを用意する必要がなくなる、プログラマブルデバイスならではの強み」(林田氏)として紹介するなど、今後も自動車向け製品を拡大していくことを強調した。
現在、自動車をはじめ、さまざまな分野で半導体不足が生じているが、これについて林田氏は「需要と供給のバランスの崩れは今後もしばらく続く見込みだ。ザイリンクスとしては顧客の需要を早めに聞き出して、できるだけ滞りなく提供できるように最善を尽くしていく。そういった意味では、日本市場だけでなく、世界的にも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による打撃から回復基調にあると考えている」と語った。
日本初のPremier Member
説明会には、XilinxのAlliance Program Premier MemberであるOKIアイディエス(OIDS)から、社長の清水智氏も登壇。Xilinxのデバイスを使った開発実績などを紹介した。OIDSは、2013年1月に、日本の開発/設計専業企業としては初めて、Premier Memberとして認定登録を受けた企業だ。以来、年間150件以上の開発を実施している。
産学連携でFPGAの活用を推進
清水氏の次には、東京工業大学(東工大) 情報理工学院 准教授の吉瀬譲二氏が登壇し、産学連携でFPGAの活用を推進する組織「ACRi(アダプティブコンピューティング研究推進体/アクリ)」を紹介した。ACRiは2020年4月に設立。4つの大学と17の企業が運営している。
FPGAの利用環境と学習機会を無償で提供する目的で開設した「ACRiルーム」は、オンラインのFPGA利用環境で、東工大の構内に設置された100枚超のFPGAボードと開発用ソフトウェアに、リモートからアクセスして利用できるようになっている。吉瀬氏によれば、ACRiルームの登録者は、2020年7月のプレオープンから6カ月間で、450人を達成したという。
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