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高層化の継続で、製造コストを爆下げする3D NANDフラッシュ福田昭のストレージ通信(177) アナリストが語る不揮発性メモリの最新動向(4)(2/2 ページ)

今回からは、半導体メモリのアナリストであるMark Webb氏の「Flash Memory Technologies and Costs Through 2025(フラッシュメモリの技術とコストを2025年まで展望する)」と題する講演の概要をご紹介する。

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96層の3D NAND技術で512Gビットの大容量シリコンを量産中

 Mark Webb氏は始めに、3D NANDフラッシュメモリ(以降は「3D NANDフラッシュ」と表記)の技術動向と大手ベンダー各社の動向を説明した。3D NANDフラッシュの製造技術は、メモリセル(およびワード線)の積層数によって世代を表現することが多い。過去には24層、32層、48層、64層といった積層数の3D NANDフラッシュが開発され、量産されてきた。

 現在(2020年11月の講演時点)の量産世代は、96層(96L)が最先端の世代である。ビット換算で生産数量の50%以上を占める。シリコンダイ当たりの記憶容量は512Gビットが主流で、256Gビットのダイも大手ベンダーは製造している。技術的には1Tビット以上も狙える。

 次世代は積層数を128層(128L)に高層化する。112層〜144層の3D NANDフラッシュがこの世代に含まれる。既に商業生産が始まっている。2020年第4四半期時点における生産数量はビット換算でNANDフラッシュ全体の15%未満にとどまる。

 次々世代は176層(176L)である。おおよそ160層〜192層の3D NANDフラッシュがこの世代に含まれる。大手ベンダーが開発を完了しつつある世代だ。

 さらに次の世代は、256層(256L)になるとみられる。技術的には十分に可能であり、大手ベンダーの全てが近い将来に技術開発を完了させるだろう。

 96層(96L)以降の高層化は、シリコンダイの大容量化を意味しない。この点は重要である。高層化は、記憶容量当たりのコスト削減に使われる。記憶容量が512Gビットから1Tビットのシリコンダイを、高層化によってどんどん小さくしていく。


3D NANDフラッシュの製造技術世代。出典:FMS 2020の講演FMS 2020の講演「Flash Memory Technologies and Costs Through 2025」の配布資料(クリックで拡大)

大手ベンダー各社は128層の次世代品を製造へ

 大手ベンダー各社は128層(128L)の3D NAND技術による次世代品の生産を立ち上げつつある。Samsung Electronicsは128層世代もシングルスタック(シングルティアー)で製造する。周辺回路とメモリセルアレイを積層する技術は採用しない。既に出荷を始めている。

 SK hynixは生産を128層品へと移行しつつある。メモリセルアレイはダブルスタック(2ティアー)を採用しており、周辺回路とメモリセルアレイを積層する技術(CUA:CMOS Under Array)を併用する。

 Western Digital(WD)とキオクシアの連合チームは、112層品の製造を始めている。メモリセルアレイはダブルスタックである。CUAは採用している可能性が高い。

 Micron Technologyは128層世代からチャージトラップ(電荷捕獲)方式のメモリセルを採用した。ダブルスタックとCUAを駆使する。128層世代の生産は限定的なものになるとみられる。

 Intelは従来と同様にフローティングゲート(浮遊ゲート)方式のメモリセルで高層化を継続する。CUAの144層品で製造を立ち上げる。スタック数(ティアー数)は3つになっている可能性がある。


3D NANDフラッシュ大手ベンダーの動向。出典:FMS 2020の講演「Flash Memory Technologies and Costs Through 2025」の配布資料(クリックで拡大)

次回に続く

⇒「福田昭のストレージ通信」連載バックナンバー一覧

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