米政府、半導体製造強化に370億ドルを投資へ:バイデン大統領が大統領令に署名(2/2 ページ)
米国バイデン大統領が2021年2月24日(米国時間)、以前からの予想通り、大統領令に署名した。これにより、370億米ドルの連邦政府投資を行い、半導体の供給不足に対応するための道が開かれることになる。
米半導体業界も歓迎
大統領令の第一部では、米国の競争力を保護および強化していく上で不可欠な4つの重要製品のサプライチェーンについて、直ちに100日間のレビューを行うとされている。対象となるのは、半導体や、主要な鉱物/材料、医薬品、電気自動車などに向けた高性能バッテリーだ。また第二部では、業界において今後12カ月間にわたり長期的なレビューを行うことで、サプライチェーンをあらゆる段階で強化するための政策提言を特定し、それを直ちに実行するとしている。バイデン大統領は、「われわれは、レビューの完成を待たずして、既存の不足分を補うための活動を開始するつもりだ」と付け加えた。
業界は明らかに、今回の大統領令を歓迎している。SIAは、Qorvoのプレジデント兼CEO(最高経営責任者)であり、ディレクターも務めるBob Bruggeworth氏の声明を発表している。同氏は、2021年のSIA議長も務めるという。SIAのメンバー企業の売上高は、米国半導体業界の売上高全体の98%を占めている。
Bruggeworth氏は、「われわれは、今回の大統領令を歓迎している。バイデン政権との協業により、米国半導体サプライチェーンを確実に強化し、回復力を高めていくための準備態勢を整えているところだ。現在こうした取り組みの一環として、大統領と議会に対し、米国内の半導体チップ製造/研究分野に積極的な投資を行うことを要請している。そうすれば米国は、必要とする半導体の多くを国内で確実に生産できるようになるとともに、その経済力や雇用創出、国家安全保障、重要インフラなどの中心となっている、持続的な技術リーダーシップを推進していくことも可能になる」と述べる。
また、科学技術政策関連のシンクタンクであるITIFも、グローバルイノベーションポリシー担当バイスプレジデントを務めるStephen Ezell氏の声明を発表している。
Ezell氏は、「今回の大統領令は、バイデン政権が、サプライチェーンの回復力とセキュリティを高めるために全力で取り組むことにより、半導体や医薬品、電気自動車用バッテリー、レアアースなどの高度産業分野において、米国の競争力をサポートしていく考えであるという、重要なシグナルを送ったことになる。現在の半導体供給不足は、戦略的に重要な他の業界にも影響を及ぼしているということもあり、サプライチェーン政策を正しく実施することの必要性を浮き彫りにしている」と述べた。
2020年に発行されたBCGのレポートによると、グローバルの半導体製造能力は2020年から2030年にかけて50%増加するとされている。米国にとっては、新しい工場のシェアを高める市場機会になり得る。同レポートによると、今後10年間に建設される新しい最先端ファブに対する、200億〜500億米ドル規模の連邦政府の追加補助金および税制優遇措置プログラムは、過去30年間の米国半導体製造の減少傾向を逆転させるのに効果的であるという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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