高耐熱性の二次実装補強サイドフィル材料を開発:車載部品の実装信頼性と生産性向上
パナソニック インダストリアルソリューションズ社は、車載部品などに用いる大型半導体パッケージの、はんだクラックを抑えることができる高耐熱性二次実装補強サイドフィル材料「CV5797U」を製品化、量産を始める。
25×25mmを超える大型BGAの実装補強も可能に
パナソニック インダストリアルソリューションズ社は2021年3月、車載部品などに用いる大型半導体パッケージの、はんだクラックを抑えることができる高耐熱性二次実装補強サイドフィル材料「CV5797U」を製品化、量産を始めると発表した。
車載用電子機器は、車室内外の温度ギャップや走行中の振動などにも耐えられる、高い信頼性が求められる。一方で、電子機器の高機能化や高密度実装化に伴い、半導体パッケージにおける発熱量の増加、外部接続端子の面積減少などに起因する、はんだ接続部でのクラック発生など、実装品質に関わる課題も増えてきた。
CV5797Uは、これらの課題を解決できる製品である。独自の樹脂設計技術により、ガラス転移温度(Tg)は160℃と高く、熱膨張係数(CTE)は14ppmと低い。これにより、半導体パッケージと実装基板の間で生じる熱収縮差を抑制し、はんだ接合部にかかる応力を低減できるという。温度サイクル試験では、−55〜125℃で6000サイクルを達成した。
また、独自の樹脂反応制御技術により、常温でのポットライフ(可使時間)も72時間を確保した。これは、同社従来品(CV5314)に比べて3倍の長さであり、取り扱いを容易にした。補強タクトタイムは、樹脂を部品と基板の隙間に浸透させて加熱硬化させるアンダーフィル材使用時と比べて、約10分の1に低減するなど実装工程における生産性の向上も可能になった。
CV5797Uは、樹脂を部品の側面部分に塗布して加熱硬化させるサイドフィル材料のため、QFNはもとより、外形寸法が25×25mmを超える大型のBGAについても、実装補強が可能である。
CV5797Uは、車載カメラモジュールや車載通信モジュール(ミリ波レーダー用モジュール)、車載ECU、次世代コックピット、ヘッドライトなどの半導体パッケージや電子部品の実装補強用途に提案していく。
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