全固体電池内部のリチウムイオン移動抵抗を可視化:薄膜型とバルク型の解析を可能に
パナソニックは、ファインセラミックスセンター(JFCC)および、名古屋大学未来材料・システム研究所と共同で、全固体電池の充放電中におけるリチウムイオンの動きを、ナノメートルの分解能でリアルタイムに観察する技術を開発した。
透過電子顕微鏡と機械学習でリアルタイムに観察
パナソニックは2020年7月、ファインセラミックスセンター(JFCC)および、名古屋大学未来材料・システム研究所と共同で、全固体電池の充放電中におけるリチウムイオンの動きを、ナノメートルの分解能でリアルタイムに観察する技術を開発したと発表した。
全固体リチウムイオン電池は、高い安全性とエネルギー密度を実現できることから、次世代の二次電池として期待されている。今後、より高性能な電池を開発していくには、電池内部におけるリチウムイオンの動きを正確に理解する必要があるという。
パナソニックとJFCC、名古屋大学はこれまで、薄膜型全固体電池内部におけるリチウムイオンの動きを可視化できる「オペランド透過電子顕微鏡解析技術」を共同で開発してきた。今回は、この技術をバルク型全固体電池にも応用した。併せて、画像の撮影時間を大幅に短縮した。従来は1画像当たり15分も要していたが、これを約30秒まで短くした。この結果、薄膜型とバルク型の全固体電池について、内部を流れるリチウムイオンの動きをナノメートルの空間分解能で、リアルタイムに観測できるようになった。
バルク型全固体電池の観察を行うに当たって、透過電子顕微鏡の試料ホルダーを改良し、分析する試料についても形状の最適化を行った。これによって、バルク型全固体電池を透過電子顕微鏡内部に作り込むことに成功した。
また、リチウム検出を行う電子エネルギー損失分光法に、スパースコーディングと呼ばれる機械学習を適用した。画像の超解像とノイズ除去を可能にしたことで、透過電子顕微鏡によるリチウムイオン分布の観察を可能にした。
開発した技術を用い、リチウムイオン移動抵抗の可視化を可能にした。これにより、リチウムイオンが複雑な拡散過程を伴って充放電していることが解明された。研究成果を活用することで、内部抵抗が低い電池の設計が可能となり、高性能な全固体電池を実現できるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- パナソニック、バッテリーマネジメント技術を開発
パナソニック インダストリアルソリューションズ社は、機器に搭載したままでリチウムイオン電池の残存価値を評価できるバッテリーマネジメント技術を、立命館大学理工学部福井研究室と共同で開発した。 - パナソニック、新TOF方式距離画像センサーを開発
パナソニック インダストリアルソリューションズ社は、アバランシェフォトダイオード(APD)画素を用いた新型TOF(Time-of-Flight)方式距離画像センサーを開発した。 - パナと日本IBMが半導体製造装置分野で協業
パナソニックと日本IBMが、半導体製造装置分野で協業する。パナソニックが製造、販売するプラズマダイサーなどの半導体後工程製造装置の価値を高めるソフトウェアなどをパナソニックと日本IBMで共同開発し、パナソニックが製造装置ともに提供する。 - パナソニック、Winbond子会社に半導体事業を譲渡
パナソニックは2019年11月28日、100%子会社のパナソニック セミコンダクターソリューションズ(京都府長岡京市、以下PSCS)を中心に運営する半導体事業を台湾のWinbond Electronics傘下のNuvoton Technologyに譲渡すること、同社との間で株式資産譲渡契約を締結することを決定した、と発表した。2020年6月1日を効力発生日として、譲渡を実施する予定という。 - パナソニック、液晶パネルの生産終了を発表
パナソニックは2019年11月21日、液晶パネルの生産を2021年をめどに終了すると発表した。 - 名古屋大と九州大、一滴の水で5Vの発電に成功
名古屋大学と九州大学の研究グループは、一滴の水で5V以上の電圧を発電させることに成功した。雨滴などを活用した自己給電型IoTデバイスなどへの応用に期待する。