TSMCとSamsung、巨額投資でリードをさらに広げるか:2021年は2社で555億ドルの見込み
IC Insights によると、Samsung Electronics(以下、Samsung)とTSMCは生産技術に対して競合先よりも多くの設備投資を行っていることから、2021年に半導体製造業界でのリードを広げる構えだという。
IC Insights によると、Samsung Electronics(以下、Samsung)とTSMCは生産技術に対して競合先よりも多くの設備投資を行っていることから、2021年に半導体製造業界でのリードを広げる構えだという。
IC Insightsが2021年3月16日に発表した調査レポートで述べたところによると、SamsungとTSMCの2021年の設備投資額を合わせると、少なくとも555億米ドルに達する見込みで、半導体業界全体の設備投資額に占める割合も記録的な高さになるという。これほどまでに多額の設備投資に対抗できる企業は他に存在しないことから、2021年、2社は高度な半導体製造技術に関して競合先をさらに引き離すようになる可能性が高いとIC Insightsは述べた。
IC InsightsのプレジデントであるBill McClean氏は、米国EE Timesへのメールの中で「他の半導体メーカーや政府が極めて迅速で断固たる行動を取っていないことから、SamsungとTSMCは高度な半導体プロセス技術の世界制覇への道を着々と進んでいると言える。高度な半導体プロセス技術は、将来のあらゆる高度な民生、商用、軍用電子システムの土台となるものである」とコメントした。
半導体業界におけるアジア系企業2社の優位性の高まりは、広範囲にわたり地政学面ならびにビジネス面への影響をもたらす。過去12カ月間で、欧米各国の政府は減退しつつある国内の半導体産業を再構築することで、世界規模で拡大するサプライチェーンでの2社の露出を減らす取り組みを始めた。
Wedbush Securitiesでエグゼクティブバイスプレジデントを務めるMatthew Bryson氏によると、そうした欧米各国の努力にもかかわらず、SamsungとTSMCは恐らく今後も、高度なプロセス技術が求められるファウンドリー市場の大部分を今と同じように2社で分け合うことになるという。2社の競合先で、半導体業界で第3位の地位にあるIntelは今後も後れを取り続ける可能性が高いとBryson氏は述べている。
Bryson氏はEE Timesに「上述したシナリオにおいては、Intelのシェアは低下し続けるか、自社の垂直統合型デバイスメーカー(IDM:Integrated Device Manufacturer)というビジネスモデルから完全に離れることを余儀なくされるだろう。より興味深い質問として、もしSamsungがどこかの時点でリーダー的地位を獲得し、ファウンドリーの顧客や競合先よりも自社製品を優遇する形で、製造面での何らかの優位性を使ったら何が起こるのだろうか?」と述べた。
TSMCとは異なり、Samsungはチップ以外にもスマートフォンやテレビといったブランド製品も製造している。TSMCはAppleからXilinxまでさまざまな顧客向けに半導体チップを製造しており、それが唯一の事業だ。社内のニーズに大いに尽力するIDMであるIntelのビジネスモデルは、SamsungとTSMCとは異なる。
IC Insights社よると、SamsungとTSMCは2021年、生産拡大と新しいプロセス技術開発のために、それぞれ約280億米ドルを投資するという。
McClean氏は、世界中で行われている政府主導の半導体に関する取り組みは、大きな成功を収めることはないだろうとみている。欧州には、さまざまなチップコンソーシアムの長い歴史があるが、欧州企業が最先端の技術に追い付くために役に立ったことはない。現時点では「やや手遅れ」になる可能性が高い。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- バイデン大統領、半導体業界支援に500億ドル投入へ
米国バイデン大統領は2021年3月31日(米国時間)、2兆米ドル規模のインフラ投資計画を発表し、米国半導体業界の国内生産回帰の実現に向け、500億米ドルを割り当てることを明らかにした。 - IPOを目指す、米国の専業ファウンドリーSkyWater
米国ミネソタ州の専業ファウンドリーであるSkyWater Technologyは、株式公開を目指す米国のテクノロジー企業である。SkyWaterは2021年3月、米国証券取引委員会(SEC)に株式の新規公開を申請した。 - TSMCが今後3年間で1000億ドル投資へ、生産能力強化
TSMCは生産能力を拡大すべく、今後3年間で1000億米ドルを投資するという。Bloombergが2021年4月1日に報じた。 - Intelがファウンドリー事業を発表、工場にも大規模投資
Intelは2021年3月23日(米国時間)、新CEOであるPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏によるウェブキャスト「Intel Unleashed: Engineering the Future」を公開し、米国アリゾナ州での半導体工場の設立や、独立したファウンドリーサービスの開始を含めた製造関連の戦略「IDM 2.0」について語った。 - TSMCが90億ドルの資金調達へ、日本に子会社設立も
TSMCは、生産を拡大すべく、2種類の債権売却によって約90億米ドルの資金を調達する予定であると発表した。深刻な半導体チップ不足を解消していきたい考えだという。