TSMCが90億ドルの資金調達へ、日本に子会社設立も:半導体不足の解消急ぐ
TSMCは、生産を拡大すべく、2種類の債権売却によって約90億米ドルの資金を調達する予定であると発表した。深刻な半導体チップ不足を解消していきたい考えだという。
TSMCは、生産を拡大すべく、2種類の債権売却によって約90億米ドルの資金を調達する予定であると発表した。深刻な半導体チップ不足を解消していきたい考えだという。
世界最大の半導体チップファウンドリーである同社は2021年2月9日(台湾時間)、取締役会を開き、台湾国内で約1200億台湾ドル(約44億米ドル)の社債を発行することを承認したとしている。また、子会社であるTSMC Globalに対し、生産拡大や公害防止対策のための資金として、米ドル建て社債を最大45億米ドルまで発行する保証を提供する。
日本に100%子会社を設立
またTSMCは、取締役会において、日本国内(茨城県つくば市)に100%子会社を設立することも承認した。最大186億円の払込資本金により、3Dチップ向け材料に関する研究を拡充していく予定だ。今回の発表に先立ち、TSMCが同社にとって初となる海外の半導体パッケージング工場を、日本国内に建設する計画があるとの報道が出ていたが、この時はまだ内容の確証が得られていない状態だった。
TSMCは現在、自社の生産能力を超える需要に対応すべく、全力で取り組みを進めているところだ。同社は、自動車からスマートフォンに至るまであらゆる市場向けに半導体チップの供給を確保するための地政学的な争奪戦の中で、自らが中心的な位置付けにあることを認識している。台湾政府は最近、ドイツや米国などの各国政府リーダーたちから、半導体チップの供給不足を解消するためのサポート提供を依頼されたところだ。
米国の市場調査会社Strategy AnalyticsのアナリストであるNeil Mawston氏は、「スマートフォン向け部品の供給が、ここ何年かの間で最も困難な状況に陥っている原因としては、タブレットやノートPC、電気自動車などの市場間で競争が激化しているということが挙げられる。半導体チップやディスプレイなどのスマートフォン向け部品の価格は、過去2四半期の間に約15%も急上昇している」と述べる。
またBloombergの報道によると、半導体チップの不足により、自動車メーカーの世界売上高が610億米ドル減少すると予測されている他、エレクトロニクス業界に対する影響は、それをはるかに上回る可能性があるという。
TSMC、UMCともに設備投資を増額
TSMCは2021年1月に、「当社の設備投資費は、2020年の172億米ドルから、2021年には250億〜280億米ドルに増加する見込みだ」と発表している。同社のライバルであるUMCも、設備投資費を、2020年の10億米ドルから2021年には15億米ドルに増額する予定だという。
TSMCの2021年の設備投資費の中には、米国アリゾナ州の新工場の建設費も含まれている。
同社は、台湾における製造の中心となっている「メガファブ」と同程度の規模の製造拠点を設置するという長期計画を掲げており、その一環として、米国アリゾナ州フェニックス近郊に1100エーカーの土地を確保したという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 半導体不足という「有事」が問うニッポン半導体産業のあるべき姿
2021年2月6日付の日本経済新聞1面に「半導体『持たざる経営』転機 有事の供給にリスク」という記事が掲載された。昨今はこの記事以外にも半導体業界に関する記事が注目を集めているようで、この業界に長らく関わっている筆者としてもありがたいことだ。ただ、半導体業界関連の記事をよく読んでみると「そうかな?」と首をかしげる記事も少なくない。冒頭に挙げた記事も、分かりやすく簡潔にまとまっているように見えるが、逆にまとまり過ぎていて、筆者の主張したいことが多々こぼれ落ちているように読めた。そこで、今回は半導体産業のあるべき姿について、私見を述べさせていただくことにする。 - 半導体不足は車以外でも、生産強化を急ぐファウンドリー
自動車メーカーが、半導体チップの供給を確保できていない。これは、半導体業界全体で広く不足が生じるということを反映する。この先いつになれば安定した状況に回復するのかは、誰にも分からない。 - 自動車部品30品目、2030年は約41兆円規模へ
富士キメラ総研は、自動車部品30品目の世界市場を調査し、2030年までの市場予測を発表した。市場規模は2020年見込みの27兆6820億円に対し、2030年は40兆9828億円と予測した。 - TSMCが設備投資を倍増、先端プロセスの開発を強化
TSMCは、今後数年間の堅調な成長を期待して、2021年の設備投資予算を2020年比でほぼ2倍の280億米ドルとした。世界最大のチップファウンドリーであるTSMCは、2021年に設備投資に250億〜280億米ドルを投じることとなる。 - TSMCとSamsungのEUV争奪戦の行方 〜“逆転劇”はあり得るか?
2020年、ASMLのEUV(極端紫外線)露光装置は大ブレークした。この最先端装置をめぐり、争奪戦を繰り広げているのがTSMCとSamsung Electronicsだ。2社の争奪戦の行方について考察した。 - TSMC、「N4」プロセスの量産を2022年に開始
TSMCは2020年8月24〜26日に年次イベント「TSMC 2020 Technology Symposium」をオンラインで開催し、現在「N5」プロセス適用製品の生産を拡大していく中で、「N4」プロセスを開発したと発表した。2021年に生産を開始し、2022年には量産に着手する予定だという。