次世代半導体メモリの開発ロードマップ:福田昭のストレージ通信(193) アナリストが語る不揮発性メモリの最新動向(20)(2/2 ページ)
今回から、「次世代メモリ(Emerging Memory)」の講演部分を紹介する。
MRAMとSTT-MRAMの開発企業が特に多い
ロードマップの講演スライドでは、2013年から2023年までの製品と開発に関する実績と予測を、メモリの種類と西暦年ごとに企業のロゴマークと付帯情報の形で列挙していた。2013年だけは同年以前の開発実績を含んでいる。メモリの分類ではMRAMとSTT-MRAMは同じ行に、PCRAMとXPointは同じ行に、ReRAMとメムリスタは同じ行に、FeRAMとNRAMは同じ行に、eDRAMとeFLASHは同じ行にまとめていた。
次世代半導体メモリの開発ロードマップ。2013年から2023年までのロードマップを講演スライドで提示した。出典:FMS 2020の講演「Technology Trend:NAND & Emerging Memory」のスライド(クリックで拡大)
MRAMとSTT-MRAMは開発を手掛けた、あるいは手掛けている企業が非常に多い。Everspin Technologies、Honeywell、Crocus Nano Electronics、SMIC、Avalanche Technology、ソニー、GLOBALFOUNDRIES、IBM、Samsung Electronics、Arm、IDT、Intel、UMC、TSMC、TDK、Gyrfalcon Technologyなどの企業がスライドには列挙されていた。
PCRAMとXPointは、MRAMに比べると開発を手掛けた企業がずっと少ない。2013年頃にNumonyxとMicron Technology、Samsung Electronicsが登場した後は、2017年のIntel(3D XPointメモリの「Optane」)まで再登場を待たなければならない。2021年にはSTMicroelectronicsが埋め込み用PCRAMをマイコンで製品化した。
ReRAMとメムリスタは、パナソニックとAdesto Technologiesが早くから開発を手掛けていた。最近ではCrossbar、富士通セミコンダクター、Microsemi、TSMC、Intelなどが新たに登場している。なお、富士通セミコンダクターはパナソニックのReRAM技術を導入しており、8Mビットの単体メモリを量産中である。
FeRAMでは、Texas Instrumentsと富士通セミコンダクター、ラピスセミコンダクタ、Cypress Semiconductorなどが開発企業として列挙されている。NRAMは開発ベンチャーのNanteroのみである。
eDRAMは、IBMとIntelがキャッシュ用に開発を継続してきた。eFLASHにはSamsung、UMC、Cypress、Infineon Technologies、STMicroelectronics、TSMCなどが挙がっているものの、ルネサス エレクトロニクスやNXP Semiconductors、SST(Silicon Storage Technology)などが掲載されていない。やや不十分なリストになっていると言える。
(次回に続く)
⇒「福田昭のストレージ通信」連載バックナンバー一覧
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 中国の3D NANDフラッシュメーカー「YMTC」の現状
今回は、中国の3D NANDフラッシュベンチャーであるYMTC(Yangtze Memory Technologies Co., Ltd.)の現状に関する講演部分を紹介する。 - 高層化の継続で、製造コストを爆下げする3D NANDフラッシュ
今回からは、半導体メモリのアナリストであるMark Webb氏の「Flash Memory Technologies and Costs Through 2025(フラッシュメモリの技術とコストを2025年まで展望する)」と題する講演の概要をご紹介する。 - ソニーが20年度通期業績を上方修正、CMOSセンサーも想定上回る
ソニーは2021年2月3日、2021年3月期(2020年度)第3四半期(2020年10〜12月期)決算を発表するとともに、2020年度通期業績予想を上方修正した。 - 前進し続けるIntel
Intelは2021年1月21日(米国時間)、業績発表を行った。それを見ると、同社の“終末時計”のカウントダウンに、少なくとも数秒は追加されたといえるだろう。ただし、完全に楽観視できるわけではなさそうだ。スピンドクター(情報操作が得意な人)たちは、Intelの2020年の業績のマイナス面だけを簡単に強調することができる。また、プラス面よりも欠点の方に反応を示す投資家たちもいる。 - HDD大手Western Digitalの業績、前年同期比の営業利益が3四半期連続で増加
今回は、米Western Digitalの2021会計年度第1四半期の業績を紹介する。 - 新材料で次々世代を狙う「強誘電体メモリ(FeRAM)」
今回は「強誘電体メモリ(FeRAM)」を取り上げる。FeRAMの記憶原理と、60年以上に及ぶ開発の歴史を紹介しよう。