Bluetooth市場、LE Audioや照明が成長をけん引:コロナで成長横ばいも回復基調に(2/2 ページ)
Bluetooth SIGは2021年4月14日、オンライン記者説明会を開催し、Bluetoothの市場動向などを説明した。Bluetooth SIGのマーケットデベロップメント シニア・ディレクターを務めるCuck Sabin氏によれば、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、Bluetooth市場の成長は1年遅れになったものの、2021年から出荷数の増加は回復する」という。
オーディオの新規格「LE Audio」
Bluetoothのソリューションは大きく分けて「オーディオストリーミング」「データ転送」「位置情報サービス」「デバイスネットワーク」の4つがある。
オーディオストリーミングでは、「LE Audio」が今後の成長をけん引するとSabin氏は述べる。LE Audioは、これまでのBluetoothオーディオ(Classis Audio)とは全く別に、新たに策定されている規格。「LC3」という高品質、低消費電力の新しいオーディオコーデックを採用し、マルチストリーム機能とブロードキャストオーディオ/オーディオシェアリング機能*)を備えている。イヤフォンのみならず、補聴器や会議用レシーバーなどの機能を大きく変えると期待されている。LE Audioは複数の規格から構成され、Sabin氏によればそのうちの幾つかについては策定が完了している。「LE Audioを搭載した新しいデバイスの販売開始は、ことし(2021年)の終わりから2022年初頭にかけてではないか」(同氏)
*)ブロードキャストオーディオは、1つのオーディオソースデバイスから、多数のオーディオ機器にストリーミングできる機能。これまでBluetoothは、音声についてはポイントツーポイントにしか対応していなかった。オーディオシェアリングは、自分のBluetoothオーディオを周囲の人と共有できる機能。
データ転送は、リモートワークの増加によるPC周辺機器の売り上げ増や、ヘルスケアに対する意識の高まりや治療時の安全確保などを背景にしたウェアラブル機器および医療機器の売り上げ増によって、成長した。
位置情報サービスは、特に小売業界での導入が進んでいる。COVID-19の影響で、建物や施設へのアクセスが制限されたことにより、位置情報サービスの導入は一時的に約25%鈍化したが、2021年には特に屋内ナビゲーションの成長が期待される。将来的には、資産追跡のアプリケーションも有望だ。2021〜2025年にかけて、Bluetoothの資産追跡タグの出荷数は4倍に成長する見込みとなっている。
急速に成長するデバイスネットワーク
デバイスネットワークは、「最も速い成長を遂げているBluetoothソリューション分野だ」(Sabin氏)という。2021〜2025年にかけて、Bluetoothのデバイスネットワーク機器の年間出荷台数は4.4倍に増加すると予測されている。「位置情報サービス同様、導入件数は鈍化したが、自宅で過ごす時間が長くなったことでスマートホームやスマート家電、スマート照明などへの関心が高まっている。特に、スマート照明はBluetooth市場の成長要因になっていくだろう」(Sabin氏)
商用スマート照明については、4000ノードなど大規模な導入が増えている。「スマート照明が貢献できるのは節電だけではない。より優れたビル管理や、そのビルを利用する人々のユーザー体験の向上も可能になる」(Sabin氏)
Bluetooth SIGは、DALI Allianceと共同で、IoT(モノのインターネット)対応商用照明システムの推進や、スマート照明関連の規格策定などで協力している。Sabin氏によれば、DALI Allianceは間もなく、「Bluetooth Mesh to DALI Gateway Specification」の規格策定完了を発表する予定だという。同規格は、DALI AllianceのD4i認証を受けた照明器具が、Bluetooth meshベースのスマート照明ネットワーク上で管理/制御できるようになるというもの。エネルギー効率とユーザー体験の大幅な向上が期待できるとする。「DALI Allianceとの協業により、Bluetoothを活用するスマート照明は、より照明市場に受け入れられやすくなるだろう」(Sabin氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 東芝、ボタンにも内蔵できるBLEモジュール開発
東芝は、衣服のボタンにも内蔵できる小型の「Bluetooth low energy(BLE)モジュール」を開発、サンプル出荷を始める。独自のSASP(Slot Antenna on Shielded Package)技術を用いて実現した。 - ルネサス、Bluetooth 5.0対応低電力マイコンを発売
ルネサス エレクトロニクスは、消費電力が極めて小さい32ビットマイコン「REファミリ」として、Bluetooth 5.0に対応した「RE01B」を新たに発売した。環境発電や小型電池で長時間動作が求められる小型ヘルスケア機器などの用途に向ける。 - 持ち運びできる蓄電池で「どこでも電源を確保」
パナソニック ライフソリューションズ社は2021年3月24日、可搬型バッテリーの新製品「イーブロック(e-block)」を発表した。充放電器から取り外して持ち運べるので、任意の場所で手軽に電源ポイントを確保できることが特長だ。 - アルプスアルパインとBroadcomがBLE測距技術で協業
アルプスアルパインとBroadcomは2021年1月5日、両社がBLE(Bluetooth Low Energy)を応用したセキュアかつ高精度な測距システムで協業すると発表した。アルプスアルパインの広報担当によれば、具体的には、スマートフォンとBLEを活用した、自動車向けのキーレスエントリーシステムについて共同でマーケティングを行っていくという。 - 衛星と組み合わせる“ハイブリッド5G”、開発に着手
米国の航空宇宙大手Lockheed Martinと米国バージニア州北部に拠点を置く通信プロバイダーであるOmnispaceは、世界を網羅する衛星ベースの5G(第5世代移動通信)ネットワークの共同開発に向けて検討を進めている。 - 30Gbpsの通信速度、「Wi-Fi 7」の実用化は2024年か
IEEE 802標準化委員会は、無線LANの次の段階に向けた規格の最終調整に入るなど、順調な進捗を遂げている。ワーキンググループは最近、「IEEE 802.11be(以下、802.11be)」と呼ばれる技術基準について詳細を発表したところだが、これが予定通り2024年後半に実用化されることになれば、「Wi-Fi 7」に指定される見込みだ。