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「バンクシーの絵を焼き、NFT化する」という狂気踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(12)ブロックチェーン(6)(4/9 ページ)

「ブロックチェーン」シリーズの最終回となる今回は、ここ数カ月話題になっている「NFT(Non-Fungible Token)」を取り上げます。バンクシーの絵画焼却という衝撃的(?)な出来事をきっかけに広がったバズワード「NFT」。これは一体、何なのでしょうか。いろいろと調べて考察した結果、「バンクシーの絵画を焼いた奴はバカ」という結論に達した経緯とともに解説します。

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「NFT」とは結局、何なのか

 NFTとは何か? ―― これに対する、とても簡単な答えがあります。「FT(代替性トークン(Fungible Token)でないもの」です ―― いえいえ、ふざけている訳ではありません。

 FTとNFTを比較して説明してみましょう。トークンが代替性だの非代替性だの、そういう面倒くさいことは、いったん忘れてください。この違いは、簡単に言えば、台帳への記載方法(と、それに伴う処理)が違うだけの話なのです。

 ビットコインを含めて、全ての通貨は、分割(両替)できないと使いものになりません。10円分10枚のビットコインは、100円分のビットコインと交換(代替)できないと、お話になりません ―― だから「代替性がある」といいます。

 しかし、図中の江端の描いた……もとい、作ったイラストは、分割して取り扱うことができません。だから「代替性がない(非代替性)」ということになります。

 ちなみに、次女に、この私のイラストを見せたら、

―― なんか、どこかで見たことのあるような、これといって特徴のないイラストだね

と、言われました。

 まあ、実際、画才のない私は、どっかで見たことがあるイラストを参考にしながら、それらを組み合わせて「作って(×描いて)」いますので、反論できませんでしたが。

 閑話休題。

 FT(ビットコイン)は、代替性(分割)を前提に台帳記載の内容を構成しなければなりませんが、NFT(江端のイラスト(デジ絵))の方は、そもそも分割する必要がありません。台帳には、所有者の変更だけが記録されれば足ります。

 NFTの所有者の変更は、それほど頻繁に発生するものではないと思いますので、ビットコインのブロックチェーンで採用されている、「喧嘩(けんか)上等」のコンセンサスアルゴリズムが登場する余地はほとんどないと思われます。

 さらに、ブロックチェーンのようなフォーク(ブロックチェーンの分離)も発生する可能性はかぎりなくゼロのような気がします。

 ただ、私が分からないのは、NFTで使われているブロックチェーンを、どこの誰が管理/運用しているのか、ということです(ビットコイン(のマイニング)に関しては「電気代の安い中国奥地に住んでいる中国人」と言い切っても良いでしょう)。

 これ、調べてみたけど、結局分かりませんでした(誰か教えてください)。NFTのサービスをしている会社が1社で、独占的に行っているのであれば、ブロックチェーンの改ざんリスクは高くなるので、ちょっと危ない気がします。

「NFT」で何ができるの?

 このNFTで何ができるかというと、前述した通り「所有権の主張」と、「所有権の売買」ができるのです。

 以下は、私(江端)が作成(×創作)した絵を、NFTにして、上記の2つを行いたい場合の処理の流れを記載しています。

 私(江端)は、NFTの取引所(NFTを生成/運用してくれる会社)に、GAS代金(手数料)、自分の名称、そして、コンテンツのあるサイトの場所(ネット空間上にあるものならURL(例:https://kobore.net/amaterasu2.jpg),実世界にあるものなら緯度・経度情報(例:139.723467,35.6745988))を届け出ます。

 すると、NFTの取引所は、それらの情報がブロックチェーンの最初のブロック(台帳の第1ページ目)となって、複数の人に所有されます。それと同時に、NFTの取引所は「江端の作品のNFTが売りに出されているぞ」という公知を、NFTマーケットの顧客に開示します。

 ここで大変重要なことを言います。絶対に忘れないでください。

 「江端の"デジ絵"が売りに出される」ではなく、「江端の"デジ絵"の所有権が売りに出される」ということです。

 江端のこのデジ絵は、相変わらず、https://kobore.net/amaterasu2.jpgで見ることもできますし、(適法な範囲内であれば)誰でもいつでもコピペもできます。NFTは、江端の"デジ絵"の公開/非公開を直接コントロールできる、というものではないのです。

 もっとも、所有権者が移転した後は、新しい所有権者は、江端に対して、『https://kobore.net/amaterasu2.jpgを消去しろ』と命令することができるようになります。そして、常識的に考えて、江端はその命令に逆らうことはできません。

 さて、この所有権であるNFTは、金銭(実際にはETHの仮想通貨)で購入、転売が可能です。NFTの取引所は、この譲渡手続の手数料を得ることで、運営を続けることができるのです。

 このNFTとは「所有権の主張」を行えるものです(正確に言うと"所有権"そのものではありません(後述))ので、所有権の主張の対象となるものであれば、有体物であろうが、無体物であろうが、なんでもNFTにできます。

 ぶっちゃければ、NFTの対象にできないものと言えば、「人間」くらいのものです。もちろん「人身売買」も技術的には可能ですが、法律が禁じているからです。「臓器売買」は違法行為である上に、何回も転売できそうにないから、NFTの対象とするのは難しいでしょう。

 「恋人」のNFTは微妙です。『彼女に手を出すな! 彼女は、俺のNFTだ!!』といって、所有権を主張ができるでしょうか? 対象物(彼女)は有体物であっても、自由意思を有する有体物なので、ダメなような気がします。

 ちなみに、前回、「ブロックチェーン婚」について説明しましたが、あれは法律制度(契約)の拡張版と考えられるので、違和感なく受け入れられるのでしょう。

 という訳で、私の周りでNFTにできそうなものをピックアップしてみました。

 無体物(デジタルコンテンツ)も、有体物(自宅、システム、遺品)も、基本的には、なんでもNFTにできます。 しかし ―― え? それって変じゃない? と思った人がいるはずです。あなたのその疑問は正しいです。

 実は、「NFTは、どんなモノに対しても所有権の主張ができる」という話には、大きなウソが入りこんでいるのです。これは後述します。

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