EV組み立てで新たなチャンスを狙うFoxconn:狙いはApple(2/2 ページ)
台湾Foxconnが2021年3月に、電気自動車(EV)アライアンス「MIH Alliance」の設立を発表した。関係者たちによると、同社はこの同盟によって、EV市場への参入を検討しているメーカーとの間でパートナーシップを構築していきたい考えだとしており、そのターゲットはAppleに他ならないという。
さまざまな自動車メーカーと協業を進めるFoxconn
Foxconnは、MIH Allianceの他にも、さまざまな業務提携や投資などを行っていることから、EV市場における競争力をさらに高めていくだろう。
Fiat Chryslerは2021年1月に、Foxconnと合弁事業を設立し、中国国内でEVやコネクテッドカーを開発していく予定であることを明らかにした。
Foxconnはその1カ月後、台湾の自動車メーカーであるYulonとの間で、EV開発の合弁事業を設立している。
また、Foxconnと中国の自動車メーカーZhejiang Geely Holding Groupは2021年1月、他の自動車メーカー向けの委託製造において協業していくことを発表した。Zhejiang Geely Holding GroupはVolvoの親会社であり、Daimlerの9.7%の株式を保有する。さらにFoxconnは2021年1月に、苦境に陥っていた中国のEVメーカーBytonに資本出資をしている。
Foxconnは、米国の自動車メーカーFiskerとのパートナー提携も発表した。2023年第4四半期にEVの製造を開始する予定だという。Fiskerは以前に、自社のプラグインハイブリッド車(PHEV)「Karma」を不成功に終わらせているが、このパートナー提携により、EV事業で成功を実現するという目標を復活させることができるだろう。
FiskerはKarmaの他にも、量産向けEVモデル「Ocean」を開発している。カナダの大手自動車部品メーカーMagnaが組み立てを行っているという。
CLSAのアナリストChen氏は、「Magnaは、“自動車市場の鴻海(ホンハイ=Foxconnの中核会社)”といえる。その鴻海は、自分たちであればより優れた組み立て作業を、より低コストで行えると自負している」と述べる。
Foxconnは、Fiskerの次のプロジェクトを引き継ぐようだ。その設計プロセスはまだ初期段階にあるが、目標生産台数は25万台だという。
それが実現すれば、FoxconnにとってEV市場参入への最初の重要な一歩となるだろう。Chen氏によると、25万台のFisker車が、小売価格3万5000米ドルで販売されることにより、Foxconnの年間売上高は2024年までに約4%増加する見込みだという。
「MIH=Made in Hon Hai」?
鴻海は、MIH Allianceの”MIH”が何の略語であるのかを明らかにしていないが、投資銀行のHuang氏は、「MIHは、“Made In Hon Hai(メイドインホンハイ)”の略語だ」と述べる。
MIH Allianceのメンバーリストには、EV電池/モーターメーカーや、半導体メーカー、ソフトウェアメーカーなどが名を連ねる。Chen氏によると、その中でも主要メンバーとして挙げられるのが、日本電産と、中国のEV電池メーカーCATLだという。
この他にも、2021年3月に行われたMIH Allianceのイベントに参加した経営幹部としては、Bosch ChinaのプレジデントであるChen Yudong氏や、NVIDIAの車載ハードウェア/システム部門担当シニアバイスプレジデントを務めるGary Hicok氏、Armのオートモーティブ/IoT事業部門担当ゼネラルマネジャーであるDipti Vachani氏などが挙げられる。
Vachani氏は、Foxconnの発表の場において、「Armの成功は、産業エコシステムパートナーとの密接な協業によるところが大きい。MIH Allianceのようなプロジェクトは、業界がEV技術の将来性を認識できるようサポートしていく上で、非常に重要な存在だといえる」と語った。
2021年2月、Financial Timesは、Appleが日産自動車と秘密裏に進めていた自動運転車プロジェクトの提携について、ブランディングに関する合意に至らなかったため、協議を終了したと報じた。
また、「Project Titan」と呼ばれる自動車プロジェクトのパートナー探しの一環として、韓国の現代自動車およびその関連会社である起亜自動車との交渉も終了したと、同紙は伝えている。
FCC PartnersのHuang氏によれば、AppleのEVビジネスにおける製造パートナーとして考えられるのは、台湾メーカーのみだという。「他国のメーカーは、自社のフランチャイズやブランドを重視するが、台湾メーカーはそれらを全く気にしない」(同氏)
Foxconnは、数十年前にAppleやDellのためにノートPCを製造し始めたのと同様の新しいチャンスを得たのだ。Huang氏によれば、台湾企業は現在、EVビジネスで大きな存在感を示していないが、大きな可能性を秘めているという。「EVは、機械工学を必要とする伝統的な自動車とは大きく異なる。EVの場合、部品の3分の2は電子部品だ。そして、それは台湾がとりわけ得意とするところでもある」(Huang氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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