GaN単結晶基板量産に向け、室蘭で実証実験を開始:日本製鋼所と三菱ケミカルが共同で
日本製鋼所は、日本製鋼所M&Eの室蘭製作所構内に、窒化ガリウム(GaN)単結晶基板を量産するための実証設備を導入し、三菱ケミカルと共同で実証実験を行う。実験結果を踏まえて、2022年度初頭より4インチGaN単結晶基板の供給を始める予定である。
市場への供給開始は2022年度初頭を予定
日本製鋼所は2021年5月、日本製鋼所M&Eの室蘭製作所構内に、窒化ガリウム(GaN)単結晶基板を量産するための実証設備を導入し、三菱ケミカルと共同で実証実験を行うと発表した。実験結果を踏まえ2022年度初頭より4インチGaN単結晶基板の供給を始める予定である。6インチGaN単結晶基板の開発にも取り組む。
日本製鋼所は、人工水晶製造用のオートクレーブ(圧力容器)を製造している。世界的に多くの納入実績を持つが、特に国内市場では100%のシェアを獲得しているという。グループ会社では人工水晶を製造しており、国内のカメラメーカーなどに供給している。
一方、三菱ケミカルは、気相成長法(HVPE)と化合物半導体の加工技術を活用したGaN基板の製造技術を保有する。生産性を高めるため、独自の液相成長法(SCAAT)によるGaN基板の開発にも取り組んでいる。
さらに両社は、東北大学と大口径で高品質、低コストを可能にするGaN基板の製造技術を、名古屋大学の天野研究室とは結晶成長や特性評価の技術について、それぞれ共同研究も行っている。
これまで両社は、室蘭製作所内に建設したパイロット設備を活用し、透明で結晶欠陥が極めて少ないGaN基板を、低コストで製造する技術の開発に成功するなど、実績を重ねてきた。新たに開発した「SCAAT-LP」と呼ぶ製造プロセスは、圧力条件が100MPa程度と比較的低く、これまでのSCAATに比べ約半分の圧力で結晶成長を行う「低圧酸性アモノサーマル技術」を活用しているという。
室蘭製作所内に導入した実証設備では、「SCAAT-LP」を用いて製造する4インチGaN基板の安定供給に向けた検証を行う。実証設備の総面積は266m2で、大型オートクレーブ装置や加熱ヒーターおよび制御装置、アンモニア供給・吸収設備、高純度ガス精製装置などを導入した。
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