EVは「パワートレインの統合」がトレンドに:TIが製品群を紹介
Texas Instruments(TI)の日本法人である日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2021年5月17日、記者説明会を開催し、電気自動車(EV)のパワートレインのシステムを統合するアーキテクチャについて説明した。
Texas Instruments(TI)の日本法人である日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2021年5月17日、記者説明会を開催し、電気自動車(EV)のパワートレインのシステムを統合するアーキテクチャについて説明した。
REPORTOCEANが2021年4月に発行したレポートによると、EVの世界市場は、2020年から2030年にかけて年平均成長率(CAGR)19.8%で成長し、2030年までに1兆2993億米ドルに達すると予測されている。ただし、TI オートモーティブ・システム事業 ワールドワイド・オートモーティブ・パワートレイン部門でゼネラルマネジャーを務めるKarl-Heinz Steinmetz氏は、「EV購入を検討する消費者の割合は地域によって異なる」と述べる。例えば、ハイブリッド車(HEV)の歴史が長い日本では、その割合は10%なのに対し、EVの新興市場でもある中国では70%に達する。Steinmetz氏は、「消費者にEVを選択してもらうには、コストや走行距離において従来のエンジン車に近づけることが必要」と説明する。そのために重要なのが、「EV向けパワートレインの統合」だ。
Steinmetz氏は、「パワートレインの統合は、EVの中でもトレンドになっている。TIが持つ技術によって、パワートレインシステムを50%小型化し、コストを半減することが可能になる。加えて、設計の簡素化、機能安全対応の効率化、信頼性の向上も実現できる」と主張する。
例えば、現在業界で主流なのが、DC-DCコンバーターとOBC(オンボードチャージャー)を統合する「2 in 1オプション」だ。これに、トラクションインバーターを加えたものが「3 in 1オプション」である。HEVでは、エンジンコントロールやトランスミッションコントロールを統合することも可能だとSteinmetz氏は述べる。
パワートレイン統合向けのTI製品
同氏は「TIの製品によって、あらゆるレベルでパワートレインの統合が可能になる」と述べる。Steinmetz氏は、パワートレイン統合を可能にするTI製品の一例として、リアルタイム制御マイコン「C2000」や、車載向けGaN FET、絶縁型ゲートドライバーIC、温度センサーを取り上げ、「電力密度と効率」「信頼性」「システムのコストとサイズ」という3つの点でメリットを紹介した。
電力密度と効率では、C2000は925MIPSの演算能力とPWM(パルス幅変調)によってシステムの効率が向上するという。GaN FETは、2.2MHz動作と高速なゲートドライバーを集積しているので、磁気回路を59%削減できることから、電力密度が倍増する。絶縁型ゲートドライバーICでは、15Aのピーク駆動性能を持つ製品もあり、電力密度の増大に寄与するとSteinmetz氏は述べる。
信頼性においては、例えば絶縁型ゲートドライバーICは、150V/ナノ秒以上のCMTI(同相ノイズ耐性)を実現しており、これによって優れた通信機能を維持できるとする。温度センサーによって熱スパイクなどを検知することで、信頼性の高い保護機能も実現できるという。
システムのコストとサイズについては、車載用GaN FETを使うことでDC-DCコンバーターとOBCのサイズを、既存のSiまたはSiCベースのシステムに比べて最大50%削減できるとする。絶縁型ゲートドライバーICには、安全性を確保するためのメカニズムが50以上統合されていて、これによってBOM(Bill of Material)を削減できる。
併せてSteinmetz氏は、TIが、ASIL-D認証の取得を効率化するための仕組みを採用していることにも触れた。例えば、絶縁型ゲートドライバーICやマイコンは、TÜV SÜDが認定済みの開発プロセスで設計されていたり、TÜV SÜDが評価済みのリファレンスデザインを提供したりといった具合だ。
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