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超5Vリチウムイオン電池で実用レベルの安定作動濃い電解液を採用し副反応を抑制

東京大学大学院工学系研究科のグループは、上限の作動電圧が5Vを超えるリチウムイオン電池を開発し、実用化レベルの長期安定作動が可能なことを確認した。

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充放電を1000回繰り返しても、初期容量の93%を維持

 東京大学大学院工学系研究科の山田淳夫教授と山田裕貴准教授、Ko Seongjae特任研究員らによる研究グループは2021年4月、上限の作動電圧が5Vを超えるリチウムイオン電池を開発し、実用化レベルの長期安定作動が可能なことを確認したと発表した。

 リチウムイオン電池は、電気自動車(EV)などさまざまな用途で需要が拡大する。こうした中で、高出力化や高エネルギー密度化に対する要求も高まっている。高い電圧作動もその1つ。現状のリチウムイオン電池は上限作動電圧が4.3Vである。これを5V以上にする研究が20年以上も続けられているという。しかし、「充放電を1000回繰り返し行って初期容量の80%を維持する」という実用化レベルでの安定作動には達していなかった。その原因は「高電圧作動時の電解液と正極活物質の激しい劣化」と考えられていた。

 研究グループは今回、多角的な分析を行った。そして高電圧リチウムイオン電池の開発において、これまで見逃されてきた新たな劣化要因を特定した。高電圧作動時に容量劣化を引き起こす要因は、正極に含まれる炭素導電助剤と電解液中のアニオン(マイナスイオン)による副反応であることを突き止めた。


上限作動電圧が4.3Vの従来品(左)と、5.2Vのリチウムイオン電池のイメージ図 出典:東京大学

炭素導電助剤へのアニオン挿入による劣化機構 出典:東京大学

 この分析に基づき、電解液の設計を適切に行い、上限作動電圧が5.2Vというリチウム電池を開発し、実用化レベルの安定作動に成功した。具体的には、アニオンや溶媒分子の挿入を抑える手法として、「濃い(高濃度)」電解液に着目した。高濃度だとアニオンや溶媒分子は全てリチウムイオンと強く結びついており、炭素導電助剤への挿入が難しくなるからだ。また、特殊な液体構造によって、高電圧(高酸化雰囲気)における電解液の酸化分解反応も抑えられるという。


濃い電解液と保護膜によるアニオン挿入抑制のイメージ図 出典:東京大学

左は濃い電解液によるアニオン挿入時の活性化障壁、右は保護被膜を形成した新規表面設計でアニオン挿入を抑制 出典:東京大学

 正極表面には、アニオンの透過を防ぐ保護膜を形成できる溶媒を採用した。これによって、アニオンが炭素導電助剤に近づきにくくなるという。正極活物質の表面を強い酸化雰囲気から保護することも可能となった。

 濃い電解液を用いてフッ化リン酸コバルトリチウム(Li2CoPO4F)と黒鉛から成る高電圧リチウムイオン電池を試作した。試作品は最大充電電圧5.2Vで、1000回充放電を繰り返し行っても初期容量の93%を維持するなど、実用レベルの安定作動を確認した。


Li2CoPO4Fと黒鉛から成る高電圧リチウムイオン電池の充放電サイクル特性 出典:東京大学

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