東芝、SiC MOSFETのデバイス構造を最適化:高温環境下で高信頼と電力損失低減
東芝デバイス&ストレージは、SiC(炭化ケイ素)MOSFETの新たなデバイス構造を開発した。新構造を採用することで、高温環境下における素子の信頼性向上と電力損失の低減を実現した。
175℃の環境で、導通可能な電流量は従来構造の2倍以上に
東芝デバイス&ストレージは2021年6月、SiC(炭化ケイ素)MOSFETの新たなデバイス構造を開発したと発表した。新構造を採用することで、高温環境下における素子の信頼性向上と電力損失の低減を実現した。
同社は、SiCパワー半導体の信頼性をさらに高めるため、新たなデバイス構造の開発に取り組んできた。2020年には、耐圧1.2kVのSiC MOSFETの内部に、SBD(ショットキーバリアダイオード)をPNダイオードと並列に配置した構造を発表した。
配置したSBDは、PNダイオードよりもオン電圧が低いため、電流はSBD側に流れる。これによって、PNダイオードへの通電を抑止し結晶欠陥の拡張を防いでいた。ただ、このデバイス構造を高耐圧のデバイスに適用すると、175℃以上の高温環境下では、導通可能な電流量に制限があったという。
そこで今回、従来のデバイス構造をベースに素子を約25%微細化し、SBDによるPNダイオードへの通電抑制能力を強化するなど、構造の最適化を行った。新構造を採用した耐圧3.3kVの素子を、175℃の高温環境下で動作させたところ、信頼性を維持しつつ、導通可能な電流量が従来構造品に比べて2倍以上となった。室温における単位面積当たりのオン抵抗は、耐圧3.3kVの素子で約2割、同1.2kVの素子で約4割、それぞれ低減できることを確認した。
東芝デバイス&ストレージは、新開発のデバイス構造を用いた耐圧3.3kV製品について、2021年5月よりサンプル出荷を始めている。
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