安全な半導体回路情報を共有するシステムを検証:安心なサプライチェーンの実現へ
KDDI総合研究所と東芝情報システムは、安全で安心な半導体回路であることを、サプライチェーン上の組織間で共有する仕組みについて、実証実験を行う。
川上から川下まで安全の「証明書」をひもづけ
KDDI総合研究所と東芝情報システムは2021年7月、安全で安心な半導体回路であることを、サプライチェーン上の組織間で共有する仕組みについて、実証実験を行うと発表した。期間は2021年7月1日から同30日まで。
実証実験では、東芝情報システムが提供する、半導体回路に隠された不正回路を検出するソフトウェア「HTfinder」を用い、半導体回路にハードウエアトロイなど悪意のある機能が含まれていないことを確認。この結果を、KDDI総合研究所が開発している仕組みを用いて公開し、情報を共有する。これによって、半導体回路を利用する外部の組織からも、安全な回路であることが確認できることを検証する。
具体的には、回路を設計した組織がHTfinderを用いて、不正回路が含まれていないことを検証。その結果を証明書としてトラストストアに登録する。登録された回路を利用する組織は、証明書を確認しその回路を用いて部品を製造する。こうして製造された部品は、利用した回路の証明書との関係がひもづけされて、新たに登録される。
これらの操作を最終製品まで繰り返し行う。これによって、部品から応用製品開発までのサプライチェーンにおいて、川上から川下まで証明書のチェーンが構築でき、設計製造の全工程で不正回路を含まないことを確認できる仕組みを実現できるという。HTfinderでチェックした回路について、その証明書をトラストストアで検索することができ、安全な回路に関する詳細な情報も確認できるという。
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