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単純立方格子状に3次元自己集合した超結晶を作製ゲル浸透クロマトグラフィー法で

理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター創発超分子材料研究チームは、硫化鉛(PbS)のコロイド量子ドットをゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)処理することで、配位子密度が制御できることを明らかにし、単純立方格子状に3次元自己集合した超結晶の作製に成功した。

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硫化鉛コロイド量子ドットの配位子密度を制御

 理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター創発超分子材料研究チームのジャンジュン・リュウ特別研究員と榎本航之基礎科学特別研究員、夫勇進チームリーダーらの研究チームは2021年7月、硫化鉛(PbS)のコロイド量子ドットをゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)処理することで、配位子密度が制御できることを明らかにし、単純立方格子状に3次元自己集合した超結晶の作製に成功したと発表した。

 有機溶媒中で合成したコロイド量子ドットは、結晶表面に長鎖アルキル配位子など有機分子が配位をしている。研究チームは今回、GPC法により、PbSコロイド量子ドットにおいて連続かつ選択的に配位子の一部を除去し、量子ドットの3次元集合状態様式を制御することに取り組んだ。

 具体的な作業手順はこうだ。まず、オレイン酸を長鎖アルキル基配位子として用い、平均粒径が7.3nmのPbSコロイド量子ドットを合成した。次に、GPC法を用いて量子ドットの配位子密度を制御することにした。

 実験では量子ドット溶液をGPCのカラムに流し込み、溶離液を一定の時間と体積で区画した。溶出する量子ドットの順にGPC-1〜GPC-5および、before-GPC(GPC未処理の量子ドット)と呼び、それぞれの吸収スペクトルを測定した。この結果、全ての区画で1710nmに吸収のピークが観測された。このことから、GPC法で分画された量子ドットは、溶出順に関係なく全て同じバンドギャップを持つことが分かった。透過型電子顕微鏡(TEM)による観察でも、6種類の量子ドットは全て同じ大きさであることを確認した。

 一方、熱重量分析では異なる挙動となった。温度が330℃を超えると熱重量減衰は、GPC-1からGPC-5となるにつれて大きくなり、before-GPCで最大となった。熱重量減衰は、オレイン酸配位子の量に由来しており、量子ドット重量当たりのオレイン酸配位子量に違いがあることを示しているという。つまり、溶出が早かったGPC-1はオレイン酸配位子量が最も少なく、溶出が遅くなると配位子量は多くなることが分かった。核磁気共鳴(NMR)法による測定でも同様の結果が得られたという。


左はGPCシステムの写真、中央は吸収スペクトルのグラフ、右は熱重量分析の結果 (クリックで拡大) 出典:理研

 さらに研究チームは、GPC処理した量子ドットのトルエン希薄溶液を乾燥させ、TEMで観察した。この結果、before-GPCは六方配列、GPC-1はランダム、GPC-2は正方配列、GPC-3は六方配列になっていることが分かった。各量子ドットが一定の間隔で独立して存在していることも確認した。

 GPC-2を制限視野電子線回折(SAED)で調べると、90度に直交した4点に回折スポットが現れた。配列している量子ドット内のPbS結晶構造の向きが、全て同じ方向にそろっていることを示すものだという。


GPC処理前後におけるPbS量子ドットのTEM写真と配列様式の変化。スケールバーは100nm (クリックで拡大) 出典:理研

 研究チームは、溶液を徐々に蒸発させる方法を用い、GPC-2とGPC-5の量子ドットが3次元自己集合した超結晶を作製した。超結晶表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察および、多積層膜のTEM観察結果により、GPC-5は面心立方格子構造であることが分かった。GPC2は、単純立方格子での充填構造であることを確認した。


PbS量子ドットの超結晶(右上)と表面構造 出典:理研

 研究チームによれば、GPC法によるコロイド量子ドットの配位子密度制御は、今回のPbS量子ドットだけでなく、硫化カドミウム(CdS)やセレン化カドミウム(CdSe)など、他の半導体量子ドットにも適用することが可能だという。

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