高アスペクト比、バリアレス、エアギャップが2nm以降の配線要素技術:福田昭のデバイス通信(320) imecが語る3nm以降のCMOS技術(23)(1/2 ページ)
今回は、銅配線からルテニウム配線への移行と微細化ロードマップについて紹介する。
銅配線の次はルテニウム配線が最有力候補
半導体のデバイス技術とプロセス技術に関する世界最大の国際学会「IEDM(International Electron Devices Meeting)」は、「チュートリアル(Tutorials)」と呼ぶ技術講座を本会議(技術講演会)とは別に、プレイベントとして開催してきた。2020年12月に開催されたIEDM(Covid-19の世界的な流行によってバーチャルイベントとして開催)、通称「IEDM2020」では、合計で6本のチュートリアル講演が実施された。その中で「Innovative technology elements to enable CMOS scaling in 3nm and beyond - device architectures, parasitics and materials(CMOSを3nm以下に微細化する要素技術-デバイスアーキテクチャと寄生素子、材料)」が非常に興味深かった。講演者は研究開発機関のimecでTechnology Solutions and Enablement担当バイスプレジデントをつとめるMyung‐Hee Na氏である。
そこで本講座の概要を本コラムの第298回から、シリーズでお届けしている。なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
チュートリアル講演「Innovative technology elements to enable CMOS scaling in 3nm and beyond - device architectures, parasitics and materials(CMOSを3nm以下に微細化する要素技術-デバイスアーキテクチャと寄生素子、材料)」のアウトライン。講演スライド全体から筆者が作成したもの。前々回から、「次世代の多層配線(BEOL)技術」の講演パートを紹介している(クリックで拡大)
前々回から、5番目のパートである「次世代の多層配線(BEOL)技術」の講演内容を紹介している。主題は3nm以降の技術世代(技術ノード)を担う多層配線技術である。前々回と前回では、現在の主流である銅(Cu)のデュアルダマシン技術が21nmピッチ付近で限界となること、21nm以降の微細なピッチは、高融点金属のタングステン(W)やモリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)などに配線金属を変更する必要があること、などを説明した。
また前回の末尾では、高融点金属の中でもルテニウム(Ru)を最有力候補だとimecが考えていることを述べた。抵抗率が低いことと、バリア層が不要であること、エッチングによってパターンを加工できること、などが最有力と考える理由である。
銅配線からルテニウム配線への移行と微細化ロードマップ
imecは、「セミダマシン(Semi-Damascene)」と呼ぶ技術によってルテニウム(Ru)の多層配線構造を開発中である。セミダマシン技術では、下層の配線層の上に絶縁層を成膜し、ビアをエッチングで形成する。それから上層の配線層(Ru層)をビアごと成膜する。それからビアの周囲をエッチングし、絶縁膜で埋めるか、あるいはエアギャップとして残す。
銅(Cu)配線からルテニウム(Ru)配線への移行と微細化のロードマップは、チュートリアル講演と同じ「IEDM2020」の一般講演(論文番号32.2)で発表済みだ。21〜24nmピッチはCu配線あるいはRu配線をデュアルダマシン技術によって形成する。Ru配線とセミダマシン技術の採用は16〜18nmピッチから始まる。この段階では、隣接する配線間と上下の配線層間は低誘電率の絶縁体で埋める。配線のアスペクト比(AR比:縦/横の寸法比)は2.5前後。オプションとして3も考えられる。
16〜18nmピッチでも次の世代になると、配線のアスペクト比(AR比)を3に高めて抵抗値を下げる。また隣接する配線間の絶縁層に部分的にエアギャップを導入することで、静電容量値の増加を抑える。
さらに次の世代では、配線のAR比を5に高めて抵抗値をさらに下げる。隣接配線間の絶縁にはエアギャップを全面的に導入して容量値の増大を緩和する。この世代が16〜18nmピッチの最終世代と13〜16nmピッチの初期世代となる。
13〜16nmピッチの実現は、Ru金属では困難になる恐れが少なくない。別の金属あるいは合金を、配線とビア電極に採用する可能性が出てくる。
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