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コーディング不要のBLDCモータードライバーチューニング時間は10分未満に

日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2021年9月9日、2種類のセンサーレス(ホールセンサー不要)ブラシレスDC(BLDC)モータードライバーICを発表した。FOC(磁界方向制御)向けの「MCF8316A」と矩形波制御向けの「MCT8316A」である。いずれも、12Vおよび24Vアプリケーションで最大70Wを供給できる。

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 日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2021年9月9日、2種類のセンサーレス(ホールセンサー不要)ブラシレスDC(BLDC)モータードライバーICを発表した。FOC(磁界方向制御)向けの「MCF8316A」と矩形波制御向けの「MCT8316A」である。いずれも、12Vおよび24Vアプリケーションで最大70Wを供給できる。大型/小型家電の他、人工呼吸器やCPAP(持続陽圧呼吸)機器などの医療機器といったアプリケーションに向ける。

 MCF8316A/MCT8316Aとも、モーター制御ソフトウェアの開発と保守、認定が不要になる独自の整流制御アルゴリズムを内蔵しているので、コーディングがほぼ不要になり、通常は数週間から数カ月かかる設計時間を、10分未満に短縮することも可能だという。

チューニングの時間を数分レベルにまで短縮


TIのPunya Prakash氏

 MCF8316Aは、モーターパラメーターを自動抽出する技術を搭載している。これにより、何度もチューニングを繰り返す必要がなくなり、チューニングにかかる時間を数分レベルにまで短縮できるという。Texas Instruments(TI)のBLDCモーター・ドライバ部門で製品ライン・マネージャを務めるPunya Prakash氏は、「従来、モーターのチューニングはデータシートのパラメーターを見ながら、設計者が行っていた。その上、周辺環境の温度変化などを考慮しながら、モーターの製造においてチューニングをし続けなければならなかった」と説明する。パラメーターの自動抽出により、モーターを手早く調整できるとともに、製造におけるばらつきをなくして一貫した性能を実現できるようになる。

 さらに、精密な自動デッドタイム補償により、ノイズを低減した。Prakash氏によれば「既存のノートPCのうちファンの音が最も静かな製品に比べ、ノイズを2dBA削減した」という。

外付けマイコンが不要

 一方のMCT8316Aは、5本の端子のみでチューニングを行える。そのため、外付けマイコンが不要になりシステムを簡素化できる。MCT8316Aは最大3.5kHzと高速なモーター回転速度を実現している。そのため、ロボット掃除機のような高速なリアルタイム制御が求められるアプリケーションにおいて、システムの応答を高速化することができるという。Prakash氏は、「高度な制御手法も実装しているので、設計者は静音性能を簡単に最適化できる」と付け加えた。


今回の新製品の特長 出典:日本TI(クリックで拡大)

基板面積を約70%削減可能

 MCF8316A/MCT8316Aは、ディスクリート部品で構成した場合に比べ、基板面積を約70%削減できることも大きな特長だ。3個のゲートドライバーと、6個のハイサイドMOSFETおよびローサイドMOSFETの他、LDO(低ドロップアウト)レギュレーター、DC-DCコンバーター、電流センスアップなども統合。ディスクリート実装では、部品総数28個で基板面積が7cm2となるところを、部品総数10個で基板面積2cm2で構成できる。


多くの部品や機能を統合したことで、基板面積を最大70%削減できる 出典:日本TI(クリックで拡大)

 MCF8316A/MCT8316Aは、5×7mmの40ピンQFNパッケージで提供される。1000個購入時の単価は1.75米ドルから。

 Prakash氏は、「昨今、COVID-19の影響で在宅勤務が増えたり、吹き抜けなどの空間が一般家屋で増加したりしていることから、より静かな家電や機器、つまり、より静かなモーターに対する需要が高まっている。一方、モーターそのものについては、ACモーターからのBLDCモーターへの移行で、消費電力は少なくなっているものの、設計のサイクル時間の増加、基板サイズの増加、システムコストの増加といった課題がある。こうした需要や課題解決に応えるべく、今回の製品を開発した」と語る。

 なお、MCF8316A/MCT8316Aの使い分けについては「掃除機など高速な起動が必要なモーターにはMCT8316Aが、その他のエネルギー効率を重視するような用途であれば、MCF8316Aが適している」と説明した。「BLDCモーター市場は最も成長している市場の一つだ。現在、家電ではほとんどが矩形波制御のモーターを使用している。FOCは、リアルタイム制御の知識が必要なためにアルゴリズムの実装が難しかったり、モーターのチューニングが難しかったりといった課題がある。TIは、こうした課題を解決し、FOCモーターを使いやすくするためにMCF8316Aを開発した。MCF8316Aの登場で、矩形波制御モーターからFOCモーターへの移行が進むのではないか」(Prakash氏)

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