2層上下の配線層をダイレクトに接続する「スーパービア」の課題(前編):福田昭のデバイス通信(323) imecが語る3nm以降のCMOS技術(26)(2/2 ページ)
今回から、スーパービアが抱える本質的な課題と、その解決策を前後編の2回に分けて解説する。
ブロックする配線の本数が多層配線のレイアウトを左右
1個のスーパービアが何トラック(何本)のM2をブロックするか。最も少ないのは1トラックだ。ただしimecが3nm世代で想定する多層配線の寸法は、M1とM3が36nmピッチ、M2が21nmピッチである。最短ピッチのM2を、スーパービアでブロックする。1トラックのブロックではM2のレイアウトに与える影響は少ないものの、スーパービアとM2の絶縁を維持できるかが懸念される。
セルの高さが5トラック(5T)のスタンダードセルにおける、「スーパービア(supervia)」と第2層金属配線(M2)のレイアウト。スーパービアがブロックするM2のトラック数を変更して図示している。左(a)は1トラック、中央(b)は3トラック、右(c)は5トラックの場合。出典:imec(IEDM 2020の発表論文「Supervia Process Integration and Reliability Compared to Stacked Vias Using Barrierless Ruthenium」(論文番号20.5)) (クリックで拡大)
始めはブロックするトラックの数を増やしたときの影響を検討しよう。ブロックするトラック数が多すぎると、M2のレイアウトが阻害される。その影響は第3層から上層の金属配線層をレイアウトするときに、配線混雑度の上昇となって現れる。imecはブロックされるM2の数を1トラックから5トラックまで変えて第0層(Mint)から第5層(M5)の配線混雑度を推定した。1トラックのブロックによる混雑度を基準値「1」とすると、3トラックまでは混雑度はあまり増加しないものの、4トラックと5トラックでは第3層(M3)から第5層(M5)の混雑度が急激に上昇する。
スーパービアがブロックするM2のトラック数と、M0(Mint)からM5の配線混雑度の関係。ブロックするトラック数が3トラックを超えると、M3とM4、M5の配線混雑度が急激に増大する。なお混雑度は、ブロックするM2のトラック数が最も少ない(1トラックの)場合を基準とした相対値。出典:imec(IEDM 2020の発表論文「Supervia Process Integration and Reliability Compared to Stacked Vias Using Barrierless Ruthenium」(論文番号20.5)) (クリックで拡大)
さらに、ブロックするトラック数が多すぎるとレイアウト設計が困難になる。多層配線のレイアウト設計(配置配線(PnR)工程)で使用する設計ツールには、レイアウトが設計ルールに違反していないかどうかを検出する機能(設計ルールチェック(DRC))が組み込まれている。スーパービアがブロックするM2のトラック数が増えると、配線の混雑度が上昇するとともに、DRC違反の数が増加する。13層の多層配線構造を想定したときの推定では、ブロックされるM2が5トラックに達すると、DRC違反の数は1500を超える。一方でブロックされるM2が4トラック以下の場合は、DRC違反は100前後に収まる。
ブロックするM2のトラック数と、配線混雑度(左の縦軸)およびDRC違反数(右の縦軸)の関係。4トラックまではDRC違反は100前後にとどまる。5トラックになるとDRC違反は急激に増加し、1500を超える。13層の多層配線構造を想定したときの推定値。出典:imec(IEDM 2020の発表論文「Supervia Process Integration and Reliability Compared to Stacked Vias Using Barrierless Ruthenium」(論文番号20.5)) (クリックで拡大)
(後編に続く)
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