ヒューマノイドロボット(人間型ロボット)の支持率は、人気のない米大統領とほぼ同じくらいだ。
これは、Teslaのコンセプトロボット「Tesla Bot」に関する米国の注目度を測る調査結果の1つだ。TeslaのCEO(最高経営責任者)を務めるElon Musk氏は、2021年8月に開催した人工知能(AI)に関する同社のイベント「AI Day」でこのロボットを発表した。市場調査会社のPiplsayが実施した調査では、「Tesla Botに期待しているか、警戒しているか」という質問に対し、米国人の40%が「ヒューマノイドロボットが人間社会に入り込むこと」を容認すると答えた。なお、同調査は2021年9月6〜8日に、18歳以上の米国人を対象にオンラインで行われ、3万600件の回答を受け取ったという。
3万人以上の調査対象者のうち残りの60%は、Musk氏の提唱する無害で安全なロボットについて、「安心できない」と回答した。Musk氏の「未来的な計画とビジョン」は行き過ぎではないかと疑う声もある。Tesla Botに懐疑的な人の半数以上が、「Tesla Botは人間とAIの紛争を加速させる」という見解に同意している。
Musk氏は、Tesla Botを紹介する中で、こうした懸念ついて認めている。
同氏は、「もちろん、Tesla Botは友好的に作るつもりだ」と述べている。「機械的レベルでも物理的レベルでも、Tesla Botから逃げられるように設定しているし、十中八九打ち負かすことができる」という安全対策は笑いを誘った。そんな事態が起こらないことを願うが、先のことは分からない。
AIに対する意識調査の回答者のうち、安全に対するMusk氏の公約について「安心できた」と答えた人は32%で、42%は「納得できない」と回答している。
この性別のないロボットは、身長5フィート7インチ弱(約170cm)で威圧感がなく、顔型のディスプレイスクリーンが取り付けられている。Musk氏は、「2022年までに機械部分のプロトタイプを実用レベルにする」と約束した。ただし、Piplsayの調査によると、Teslaが予定通り製品を完成させると考えている人は37%にすぎないという。
Musk氏はTeslaを経営する傍ら、火星に人類を送るための商業宇宙ベンチャーや、バッテリー技術の進展、苦戦しているソーラーパネル事業の救済などに取り組んでいる。その上さらに別の技術プロジェクトに挑戦することには疑問がある。
Musk氏のカルト的な支持は、調査結果に反映されている。米国人のおよそ3分の1は、“現代のエジソン”のようなこの不屈のイノベーターが、電気自動車(EV)を開発し、国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を送り届けつつ、最新のAIプロジェクトを成功させる「意志と能力」を持っていると確信している。
調査では、約半数の人がMusk氏はさらに広範囲に事業を広げようとしていると考えている。
米国の作曲家Leonard Bernstein(レナード・バーンスタイン)は、偉大なことを成し遂げるには「計画」と「ほどほどの時間」という2つが必要だと述べている。
ワーカホリックのMusk氏は、Tesla BotでBernsteinのこの名言を試そうとしている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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