Arm、クラウドベースのソフトウェア開発環境を発表:高精度な仮想モデルを活用
Armは、IoT(モノのインターネット)関連製品の開発期間を大幅に短縮できるソリューション「Arm Total Solutions for IoT」を発表した。ハードウェアとソフトウェアの開発を並行して進めることができ、これまで約5年間要していた製品の設計期間を、最大で2年間も短縮できるという。
製品開発期間をこれまでの約5年から3年に短縮
Armは2021年10月19日、IoT(モノのインターネット)関連製品の開発期間を大幅に短縮できるソリューション「Arm Total Solutions for IoT」を発表した。ハードウェアとソフトウェアの開発を並行して進めることができ、これまで約5年間要していた製品の設計期間を、最大で2年間も短縮できるという。
組み込みシステムは、搭載したMCUによる制御の時代から、相互接続によるリモート管理の時代となった。さらに今後は、自律的な意思決定を行う時代を迎える。こうした中で、IoT機器向けのソフトウェアを開発する環境も新たな対応が求められている。
Arm Total Solutions for IoTは、ソフトウェア開発の簡素化と最新の開発環境により、ROI(投資対効果)を高めることができるフルスタックのソリューションと位置付ける。Armの日本法人でバイスプレジデントを務めるBruno Putman氏は、「IoTという新しい波の基盤を築くクラウドベースの包括的ソリューションである。具体的なユースケースを念頭に置いて開発した」と話す。
Arm Total Solutions for IoTで中核技術となるのが、新たに開発したクラウドベースのサービス「Arm Virtual Hardware Targets」。シリコンパートナーなどに提供してきた検証済み統合型サブシステム「Arm Corstone」の機能等価モデルを活用して、組み込み用のソフトウェア開発/評価を行うことができる。
これまでは物理的なチップの完成を待って、ソフトウェア開発に着手していたが、Arm Virtual Hardware Targetsを活用すれば、搭載するソフトウェアの開発を速やかに始めることができるという。継続的インテグレーション/継続的デプロイ(CI/CD)やDevOps、MLOpsといった最新のソフトウェア開発手法を、IoT機器開発に適用することが可能となる。エッジAI向けソフトウェアの検証もクラウド側で行えるという。
同社応用技術部のグループディレクターを務める中島理志氏によれば、「製品開発期間は一般的に、平均5年といわれているが、今回のソリューションを用いれば最大で2年間も短縮できる。Virtual Hardwareで開発したコードは、そのまま実機で実行することもできる」という。
新たに提供を始めたArm Virtual Hardware Targetsは、ArmのSoC(System on Chip)パートナーによる、「Arm Cortex-M55」プロセッサと「Arm Ethos-U55 microNPU」を組み合わせた「Arm Corstone-300」サブシステムのさまざまな構成に対応している。今後は、「Corstone-200」や「Corstone-500」なども用意していく計画だ。Arm Virtual Hardwareは、AWS Marketplace上で提供を始めている。
Arm Total Solutions for IoTとして、各社が投資済みのソフトウェアやサービスを可能な限り広範なプラットフォームで活用するための「Project Centauri」も発表した。IoTデバイスの標準化に対する取り組みである。Cortex-Aのエコシステムで展開してきた「Project Cassini」を、Arm Cortex-Mのソフトウェアエコシステムでも実現していく。
Project CentauriのAPIは、クラウド−デバイス間の標準仕様である「Open-CMSIS-CDI」をサポートしており、PSA Certifiedおよび、異なるクラウドソリューションやRTOSを有効にするために必要となる労力を最小限に抑えることができるという。
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