AIチップ開発の「ユニコーン企業」Hailoが1億3600万ドル調達:第2世代チップも開発中
イスラエルを拠点とするAI(人工知能)チップのスタートアップHailoは、シリーズCの投資ラウンドにおいて1億3600万米ドルの資金を調達した。同社がこれまでに調達した資金は、2億2400万米ドルに達することになる。また同社は、ユニコーン企業(企業価値が10億米ドル以上で、非上場の民間新興企業)としての位置付けを獲得したと報じられている。
イスラエルを拠点とするAI(人工知能)チップのスタートアップであるHailoは、シリーズCの投資ラウンドにおいて1億3600万米ドルの資金を調達した。同社がこれまでに調達した資金は、2億2400万米ドルに達することになる。また同社は、ユニコーン企業(企業価値が10億米ドル以上で、非上場の民間新興企業)としての位置付けを獲得したと報じられている。
Hailoは既に、「Hailo-8」チップの量産出荷を開始しており、今回調達した資金は引き続き、ソフトウェアサービスとサポートチームを構築するために投入する予定だという。同社はここ1年の間に、東京や台北、ミュンヘン、シリコンバレーにオフィスを開設するなど、世界各国でその存在感を高めつつある。
同社のCEO(最高経営責任者)を務めるOrr Danon氏は、米国EE Timesの取材に応じ、「われわれは現在、販売力を集中的に強化し、顧客サポート能力を構築すべく取り組みを進めている。取引先企業は、今や100社を上回る。顧客への対応範囲だけでなく、顧客が必要とするあらゆる機能をサポート可能なソフトウェアチームである、バックオフィス的なサポートチームへの対応可能な範囲についても後れを取らないようにする必要がある」と述べている。
また、Hailoは今回調達した資金を、同社製品シリーズの拡充に向けて投入し、ソフトウェア開発にも注力していくという。Danon氏は、「当社は既に100種類のモデルを取りそろえている他、現在開発中の製品もある。顧客からのフィードバックに基づいたユースケースを追加すべく、ハードウェアとソフトウェアの参照設計も増やしているところだ。さらに、第2世代チップの開発も進めている」と述べる。
同社は2019年に、エッジデバイス向けAIアクセラレーターのHailo-8を発表した。このアーキテクチャは、コンピューティングとメモリ、制御ブロックを組み合わせている他、隣接ブロックがニューラルネットワークの各層の計算/メモリ要件に応じて層上で機能できるよう、ソフトウェアで割り当てているという。Hailo-8は、AIの推論アクセラレーション向けとして、電力効率2.8TOPS/Wで演算性能26TOPSを達成するという。
Hailo-8は現在、M.2モジュールとmini-PCIeモジュールで提供されており、エッジボックスやエッジサーバアプリケーションへの統合が可能だ。また、パートナー企業のシステムでも利用可能で、主にエッジボックスに搭載されている。
例えば、MicroSys Electronicsの、NXP Semiconductors製Layerscapeプロセッサ「LX2160A」(Arm「Cortex-A72」を16コア内蔵)を搭載した組み込み産業プラットフォームなどが挙げられる。このプラットフォームには、Hailo-8チップが最大5個と、Hailo-8とx86ホストCPUを組み合わせることで複数のビデオストリームをリアルタイムで処理するLanner Electronicsのファンレスコンピュータビジョンボックスが組み込まれている。
また、ソシオネクストのイメージシグナルプロセッサ(ISP)「SC2000」を搭載した、Leopard Imagingのビデオ解析プラットフォーム「EdgeTuring」や、Hailo-8 M.2モジュールなどの他、Foxconn Technologyが開発したファンレスのビデオ解析用エッジコンピューティングボックス「BOXiedge」にも搭載されている。
Danon氏によると、Hailo-8を製造ラインの検査や生産現場の安全用途向けで使用している、産業オートメーション関連の顧客企業の数は、増加の一途にあるという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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