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パワー半導体に5年で1300億円投資、三菱電機生産能力2倍へ、12インチ工場は24年度に稼働(2/2 ページ)

三菱電機は2021年11月9日、パワーデバイス事業の事業説明会を開催し、2025年度までの今後5年間でパワー半導体事業に1300億円を投資することを明らかにした。福山工場(広島県福山市)への12インチ(300mm)ウエハーライン新設などを予定しており、2025年度までに2020年度比で生産能力を2倍にする方針だ。

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民生、自動車分野のパワーデバイス戦略

 同社は説明会において、民生、自動車分野の戦略について詳細を語った。

 まず、民生分野では、中核となる既存のルームエアコン市場(圧縮機向け)が省エネ規制強化などによって需要が拡大するほか、エアコンファン、洗濯機ファン、冷蔵庫などの電池容量が小さな用途向けもインバータ化が進展し新市場として拡大していく見通しだという。

左=民生市場の見通し/右=三菱電機の民生市場での実績[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 同社は2025年度に向け、既存市場(エアコン圧縮機向け)については、高性能化、高品質を保持しつつ、さらなる小型化を実現した戦略製品によって「シェアトップを維持する」としている。この戦略製品として挙げるのが、独自の逆導通IGBT(RC-IGBT)を搭載したパワーモジュール「SLIMDIP」シリーズであり、従来品の面積比約33%の小型化、他社比約30%の低損失を強みに展開していく。

 エアコンファン、洗濯機ファン、冷蔵庫などの新市場に向けては、周辺機能を取り込み、顧客が扱いやすい表面実装タイプの「SOPIPM」を投入しており、「顧客の基盤面積を他社品採用比で約10%小型化できる」と説明。既に大手顧客による採用も決定しており、デファクトスタンダード化を目指していく方針だ。

左=2025年度に向けた民生市場での取り組み。左が既存市場、右が新市場に対する取り組みだ[クリックで拡大] 出所:三菱電機

SiCの8インチ化も検討

 省エネ化などによって高成長が期待される自動車分野について、同社は「2030年まで特に成長する市場は小型、中型の電気自動車(EV)とみている」と説明。また、現在は大型EVや燃料電池自動車(FCV)が中心だったSiC(炭化ケイ素)市場についても、「今後高価なバッテリー削減や充電時間短縮(高電圧化)に適したSiC市場の早期拡大や前倒し、中型EVへ広がる可能性があると認識している」としていた。

左=自動車市場の見通し/右=三菱電機の自動車市場での実績[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 同社は、2025年度に向け、高性能/高品質を保持しつつ大幅に小型、軽量化を実現したパワーモジュール「J1シリーズ」を戦略製品として投入している。J1シリーズは、最新世代の薄厚化IGBTチップや冷却フィン一体構造のケースを採用することで、他社と比べ面積および重量を大幅に削減できるという特長がある。既に複数社による採用が決定しており、採用車種増加による売上拡大を見込んでいるという。

 大型EVから中型EVへの拡大の可能性があるSiCについても取り組みを強化。トレンチMOSFETに独自の製造プロセスを適用しさらなる高性能、生産性向上の実現を図るほか、ウエハ−の8インチ化も検討中だという。

左=自動車市場の見通し/右=三菱電機の自動車市場での実績[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 同社は、「顧客ニーズに合わせたシリコンとSiCの使い分けによって事業強化を図る。シリコンチップ/SiCチップを組み込んだモジュールをラインアップすることで、小型から大型まで顧客の多様なニーズに対応する」と説明した。

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