SiFiveが64ビットRISC-Vコア「P650」を発表:「P550」からわずか数カ月後
SiFiveは2021年12月2日、RISC-VプロセッサコアIP(Intellectual Property)「Performance P650(以下、P650)」を発表した。複数プロセッサコアの大規模アレイを必要とする、ハイエンドサーバをはじめ、各種アプリケーションをターゲットとする。
SiFiveは2021年12月2日、RISC-VプロセッサコアIP(Intellectual Property)「Performance P650(以下、P650)」を発表した。複数プロセッサコアの大規模アレイを必要とする、ハイエンドサーバをはじめ、各種アプリケーションをターゲットとする。
P650は、64ビットのRISC-Vアーキテクチャで、アウトオブオーダー命令のパイプラインや分岐予測も備える。SiFiveは2021年6月に「Performance P550」プロセッサコアを発表していて、そこからわずか数カ月後というタイミングで、今回この新型RISC-Vコアを発表したことになる。
P650では、命令ディスパッチ幅をP550の3から4に増加した。13段のロード/ストアパイプラインの他、10段の整数実行パイプラインも備える。これらにより、P650はP550と比較して50%の性能向上を実現したとする。
上のブロック図は、FPU(浮動小数点ユニット)について示しているが、SiFiveは、コアのFPUに関する詳細は明らかにしていない。
P650は、RISC-Vのハイパーバイザー拡張を実装することで、仮想ソフトウェア環境をサポートする。また、P550コアよりもさらに最先端のプロセス技術で実装できるという。
P650では、クラスタ当たり4〜16個のプロセッサコアを搭載した、拡張可能かつコヒーレントなマルチコアプロセッサクラスタを実装できる。P650は、それぞれ個々にL1命令キャッシュと128Kバイトのデータキャッシュを備える他、L2キャッシュが2つのバンクに分割されて実装される。L2キャッシュの最大容量については明らかにされていないが、P550のL2キャッシュが256Kバイトとみられることから、P650でもそれと同等あるいはわずかに上回る程度と推測される。
P650では、コヒーレントなインターコネクトを使用して、クラスタリングを実行するという。これについてSiFiveは、「クリーンかつコヒーレントなネットワークオンチップ(NoC)インターフェース」と説明している。
SiFiveは、「2022年初めには、一部の顧客向けに、P650アーキテクチャのプレビューを提供する予定だ。同年半ばまでには、一般向けに販売を開始できるとみている」と述べた。同社は、これらの主要顧客については具体的な社名を明かさなかったが、例えばIntelは、7nmプロセスプラットフォーム「Horse Creek」でP550コアを実装すると発表している。
エコシステムが課題に
ここでまだ明らかになっていないのが、エコシステムの問題だ。ハードウェアだけでは、サーバプロセッサ市場でシェアを勝ち取ることはできない。これは、Armプロセッサコアをサーバに搭載したいと切望する多くのメーカーにとって、厳しい教訓となっている。既にさまざまなプロジェクトが、Armコアでサーバ市場への参入を試みながら失敗に終わっており、さらにそのようなプロジェクトの数は増加の一途にある。
このように挑戦しながらも失敗に終わった半導体メーカーとしては、AMDやBroadcom、Calxeda、Cavium、Huawei、NVIDIA、Qualcomm、Samsung Electronics、Tianjin Phytiumなどが挙げられる。
Armコアのサーバ市場への参入は、例えばAmazon Web Services(AWS)の「AWS Graviton」や、富士通の「A64FX」、Marvellの「ThunderX」「ThunderX2」プロセッサなどのように、進んではいるものの、非常に時間がかかっているという状況だ。SiFiveや他のメーカーが、x86プロセッサアーキテクチャの座を取って代わろうとすると、SiFiveのP650コアをはじめ、RISC-Vアーキテクチャをベースとしたサーバプロセッサも同様に、サーバメーカーやデータセンターアーキテクトからエコシステム関連の抵抗を受けることになるだろう。
それでもSiFiveの熱狂的な支持者たちは、自分たちが支持するアーキテクチャが最終的に成功を収めるはずだと確信しているようだ。
SiFiveは、現在米国サンフランシスコで開催中の「RISC-V Summit 2021」(2021年12月6〜8日)で、P650や、今後発表予定のRISC-Vコアの詳細を明らかにする予定だという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- RISC-VベースのCPUが続々、シリコン市場参入の障壁を下げる
2021年になってRISC-VベースのCPUを搭載した評価ボードや実製品が多数出回るようになってきた。RISC-VはIntelのX86、Armコアに続く“第3のCPU”として、既に多くの企業が参画している。シリコン開発、IP化の整備と販売、評価キットのサポートなどさまざまなレイヤーでがRISC-V関連のビジネスが拡大しつつある。 - RISC-Vチップレット新興企業Ventanaが3800万米ドル調達
米国カリフォルニア州クパチーノに本社を置くRISC-V関連の新興企業であるVentana Micro Systemsが3800万米ドルの資金調達を発表し、データセンター向けコンピュータをターゲットにしたマルチコアSoC(System on Chip)チップレットの詳細を明らかにした。 - 1000コアを搭載、RISC-VベースのAIアクセラレーター
新興企業Esperantoは、これまで開発の詳細を明らかにしてこなかったが、2021年8月22〜24日にオンラインで開催された「Hot Chips 33」において、業界最高性能を実現する商用RISC-Vチップとして、ハイパースケールデータセンター向けの1000コア搭載AI(人工知能)アクセラレーター「ET-SoC-1」を発表した。 - IntelがSiFiveに20億ドルで買収提案か
Intelが、SiFiveを20億米ドルで検討する初期段階にあると報じられた。SiFiveはRISC-VベースのプロセッサコアのIP(Intellectual Property)を手掛けている。 - Wave Computingが破産、「MIPS」として事業継続へ
Wave Computingは、米連邦破産法11条の手続きを終え、MIPSとして引き続き事業を継続する予定であることを明らかにした。