Samsung、MRAMベースのインメモリコンピューティングを発表:低消費電力AIチップ実現に向け
Samsung Electronicsは2022年1月13日(韓国時間)、磁気抵抗メモリ(MRAM)のイノベーションを発表した。同社は、「単一のメモリネットワーク内でデータストレージとデータコンピューティングの両方を実行できる、世界初のMRAMベースのインメモリコンピューティングを実現した。このMRAMアレイチップは、低消費電力AI(人工知能)チップの実現に向けた次なるステップだ」と主張している。
Samsung Electronicsは2022年1月13日(韓国時間)、磁気抵抗メモリ(MRAM)ベースのインメモリコンピューティングのデモを発表した。同社は、「単一のメモリネットワーク内でデータストレージとデータコンピューティングの両方を実行できる、MRAMベースのインメモリコンピューティングを実現した。このMRAMアレイチップは、低消費電力AI(人工知能)チップの実現に向けた次なるステップだ」と主張している。
インメモリコンピューティングアーキテクチャの利用が年々増加しているのは、エッジでデータを処理できるためで、これによってデータの移動量やネットワークの遅延を削減することができる。ただし、MRAMは抵抗が低いため、標準的なインメモリアーキテクチャで使用した場合、消費電力を削減する能力が制限されてしまう。そこで、Samsungはこの課題を解消できるインメモリコンピューティングの実現に取り組んできた。
SamsungのMRAMアレイチップは、「抵抗合算(resistance sum)」方式のインメモリコンピューティングアーキテクチャを適用して、この問題を解消するという。
Samsungによると、インメモリコンピューティングアーキテクチャは、従来、不揮発性メモリのクロスバーアレイに依存しており、アナログ方式で積和演算を実行している。だが、STT-MRAM(スピン注入磁化反転型磁気メモリ)のクロスバーアレイを作成するには課題が残る。
SamsungはNature誌に発表した論文の中で、「MRAMには、耐久性があることや大規模な商用化が可能であることなど、実用的なメリットがある。問題は、MRAMの抵抗値が低いために、アナログの積和演算で電流を合算する従来のクロスバーアレイでは消費電力が大きくなってしまうことだ」と述べている。
同論文によると、Samsungの研究チームは、MRAMセルをベースにした64×64のクロスバーアレイ構造のMRAMアレイチップの開発に成功し、アナログの積和演算に抵抗合算を用いるアーキテクチャで低抵抗の問題を克服したという。
同社は、MRAMアレイチップと読み出し回路を28nmのCMOS技術で統合した。
Samsung Advanced Institute of Technology(SAIT)が同社のエレクトロニクスファウンドリー事業部門および半導体研究開発センターと共同で率いる研究チームは、「このMRAMチップをAIベースのいくつかのインスタンスでテストした」と述べている。Samsungによると、MRAMベースのインメモリコンピューティングチップは、手書きの数字の分類で98%、さまざまなシーンでの顔検出で93%の精度を達成したという。
Samsungは、インメモリコンピューティングだけでなく、生物学的ニューラルネットワークのユースケースにもMRAMアレイチップを拡張することを狙う。同社はニューロモーフィックエレクトロニクスの研究に照準を合わせ、最近では2021年9月26日にニューロモーフィックチップの展望をまとめた論文を発表した。この論文では、脳をメモリチップにリバースエンジニアリングするという同社の考え方が提示されており、これによりニューロモーフィックチップは基本的に「コピー&ペースト」の手法で人間の脳をエミュレートすることができるようになる、としている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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