Mercedes、EVにニューロモーフィックSoCを採用:消費電力削減と航続距離延長の実現
Mercedes-Benzが、“史上最も効率的なMercedes-Benz”と謳うコンセプトカー「Mercedes VISION EQXX」は、消費電力の削減と航続距離の延長を促進するニューロモーフィックコンピューティングを採用している。VISION EQXXに搭載されたBrainChipのニューロモルフィックチップ「Akida」は、既存のAI(人工知能)ベースのキーワード検出システムよりも電力効率の高い方法として、車内でのキーワードスポッティングを実現して高効率化をサポートしている。
1回の充電で1000km以上の航続が可能
Mercedes-Benzが、“史上最も効率的なMercedes-Benz”と謳うコンセプトカー「Mercedes VISION EQXX」は、消費電力の削減と航続距離の延長を促進するニューロモーフィックコンピューティングを採用している。VISION EQXXに搭載されたBrainChipのニューロモルフィックチップ「Akida」は、既存のAI(人工知能)ベースのキーワード検出システムよりも電力効率の高い方法として、車内でのキーワードスポッティングを実現して高効率化をサポートしている。
自動車メーカーが電気自動車(EV)に焦点を移す中で、多くのメーカーは1回の充電で最後の1ボルトまで有効活用するために奮闘している。そのため、EVの航続距離を伸ばすには、車載電子システムの消費電力の削減が必要不可欠になっている。
Mercedesは、VISION EQXXを「あなたのように考える車」とうたい、1回の充電で1000km以上の航続距離が可能だとする。
従来より5〜10倍効率的な音声制御
MercedesはVISION EQXXについて説明した中で、「Mercedes-Benzのエンジニアは、米国カリフォルニア州に拠点を置くAIのエキスパート企業BrainChipと協力して、BrainChipのAkidaハードウェアとソフトウェアをベースとするシステムを開発した」と述べた。VISION EQXXでは、「ヘイ メルセデス」というホットワードを検出する。Mercedesは、「このシステムは、ニューロモーフィックの原理に従って構成されており、従来の音声制御よりも5〜10倍効率的だ」と主張する。
これはつまり、BrainChipの技術に早期アクセスした顧客の1社によって、同社の技術が検証されたということである。BrainChipのAkidaチップは、スパイキングニューラルネットワーク(SNN)と(SNNに変換した)畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を高速化する。これは、特定のアプリケーションに限定されるものではなく、例えば人物検出や、音声や顔認識のSNNも実行可能で、Mercedesもいずれこれらの機能に対応できるようになる。
Mercedesは、「ニューロモーフィックコンピューティングはまだ黎明期にあるが、こうしたシステムは数年後には市場に出回るようになると予想される。車両全体に大規模に適用すれば、最新のAI技術の実行に必要なエネルギーを大幅に削減できる可能性がある」と述べている。
これとは別に、BrainChipの初期顧客であるInformation Systems Laboratoriesは、米国空軍研究所向けにAIベースのレーダーを開発している。このレーダーもAkidaチップをベースとしている。
BrainChipは、2021年10月に発表した2つの開発キット(x86ベースのPC用開発キット「Shuttle」と、Armベースの「Raspberry Pi」キット)に続いてスマートホームや健康、都市、輸送向けアプリケーションのシステムインテグレーターをターゲットに、Mini PCIeボードに搭載したAkidaチップを大量に提供している。
BrianChipのワールドワイドセールス担当バイスプレジデントを務めるRob Telson氏は、「当社は、大量のボードを購入したい企業と同様に、チップの試作向けに数個のボードを購入したい企業もサポートできる。これはテストキットでもリファレンスキットでもない、生産用キットだ」と語った。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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