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NVIDIA、HPCソフトウェアのBright Computingを買収「クラスタ管理」という重要なニッチ市場

NVIDIAは、かねて半導体IPベンダーArmの買収を表明しているが、今もまだ規制当局によって中途半端な状態に置かれたままだ。しかし、NVIDIAは2022年1月、Arm買収ほどの華々しさには欠けるものの、HPCソフトウェアを専業とするBright Computingの買収に成功したことを明らかにした。

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 ハイパースケーラーは現在、AI(人工知能)やハイエンドの自動化ワークロードをサポートすべくスーパーコンピューティングクラスタを構築している。このためインフラプロバイダーは、HPC(高性能コンピューティング)クラスタや高速ネットワークで接続されたサーバの集合体を管理する上で、より良い方法を模索しているところだ。

 GPU最大手のNVIDIAは、かねて半導体IPベンダーArmの買収を表明しているが、今もまだ規制当局によって中途半端な状態に置かれたままだ。しかし、NVIDIAは2022年1月、Arm買収ほどの華々しさには欠けるものの、HPCソフトウェアを専業とするBright Computingの買収に成功したことを明らかにした。

 NVIDIAは詳細を問われると、「今回の取引について詳しく発表する予定はない」と答えている。

「インダストリアルHPC時代」を実現するための手段

 Bright Computingは、オランダのアムステルダムに拠点を置く株式非公開企業である。2009年に、LinuxインテグレーターであるClusterVisionからスピンアウトして設立された。Bright Computingのソフトウェアは、HPCや、Kubernetesコンテナクラスタ、プライベートクラウドなどの設定/管理に使われている。この中には、OpenStackクラウドコンピューティングプラットフォームのデータセンターで動作しているものなども含まれる。

 NVIDIAのCEO(最高経営責任者)であるJensen Huang氏は、自らが名付けた「インダストリアルHPC時代」を実現するための手段として、Bright Computingの買収を推進してきたという。このインダストリアルHPC時代には、HPCクラスタが、エンタープライズデータセンターで最も重要とされているAIワークロードをサポートするために拡大していくという。

 今回の買収により、HPCが現在どのように、研究所からエンタープライズデータセンターや工場オートメーションなどのアプリケーションへと移行しているのかが明らかになったといえる。

 Bright Computingは今回の買収に向け、同社のクラスタ管理ソフトウェアを、NVIDIAのグラフィックスチップやGPUインターコネクト、CUDA APIなどに統合した。中でも最も新しいのが、NVIDIAのDGXプラットフォームだ。DGXは、AIトレーニングや推論、データ分析、インフラサポートなどをターゲットとしている。

 米国の市場調査会社Cambrian AI ResearchのアナリストであるKarl Freund氏は、「NVIDIAにとってBright Computingの買収は、クラスタ管理という重要なニッチ市場を埋めるための手段だったといえる」と述べる。

 Bright Computingは同社のソフトウェアについて、「最大数千個規模のベアメタルサーバで構成されたHPCクラスタの管理を自動化することが可能だ。これらのベアメタルサーバは、データセンターやパブリッククラウド、ハイブリッドクラウドなどの他、最近ではネットワークエッジでも稼働している」とアピールしている。このクラスタ管理ソフトウェアは、NVIDIAのGPUと組み合わせることにより、x86 CPUやKubernetesコンテナオーケストレーターをサポートすることが可能だ。

 また業界観測筋のレポートによると、Linuxクラスタマネジャーは、Armプロセッサをサポートしているため、データセンターのサーバ設計をけん引するアーキテクチャの保有者であるArmに対するNVIDIAの買収提案を、補完することにもなるという。

 Bright Computingは、約700社の顧客企業を抱えており、そこにはBoeingや米国Johns Hopkins大学、Siemensなども名を連ねる。同じく顧客企業であるNASAのジェット推進研究所(JPL:Jet Propulsion Laboratory)は、クラスタマネジャーを使用して、火星探査ローバー「Perseverance(パーサヴィアランス)」の軌跡補正や着陸座標などを計算しているという。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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