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半導体市場シェアで中国が台湾超え?SIAの報告を冷静に見る参照データは2020年のもの

半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)が2022年1月10日(米国時間)に発表したレポートによると、中国は現在、世界半導体売上高全体において台湾を上回るシェアを獲得し、欧州や日本にも迫る勢いを見せているという。ただし、この主張の根拠としてSIAは2020年当時のデータを用いている。

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 半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)が2022年1月10日(米国時間)に発表したレポート「China’s Share of Global Chip Sales Now Surpasses Taiwan’s, Closing in on Europe’s and Japan’s」によると、中国は現在、世界半導体売上高全体において台湾を上回るシェアを獲得し、欧州や日本にも迫る勢いを見せているという。

 これは非常に驚くべきことではないだろうか。最近発表された他のレポートによれば、世界ファウンドリー生産量全体のうち、TSMCが約53%のシェアを占めている。それに対し、中国最大の半導体メーカーであるSMICが世界ファウンドリー市場全体に占めるシェアは5%だという。

 中国には、TSMCの事業規模に近い半導体企業は1社も存在しないのだ。

 SIAのレポートの中で最も注目すべきは、そのタイトルに『現在』という言葉が使われているという点だろう。SIAは、主張の根拠として2020年のデータを用いており、2020年と『現在』との間に相違点があることを否定していない。

 SIAの広報担当者は、米国EE Timesとの電子メールのやりとりの中で、「利用可能な最新のデータを採用した。われわれは記事の冒頭で、2020年のデータを使用したことについて明記している((EE Timesの)指摘の通り、レポートのタイトルではこの点について触れていない)」と回答している。

 SIAは、レポートの2段落目の最後で、「2021年の売上高データについては、まだ入手できていない」と説明している。しかし、タイトルしか読まないという人は少なくない。

2021年は中国にとって激動の年

 世界半導体市場にとって2021年は、激動の年だった。特に中国の半導体業界は、世界シェアの確保に苦戦したようだ。中国の国有持ち株会社Tsinghua Unigroup(清華紫光集団)は、3D NAND型フラッシュメモリベンチャーのYMTC(Yangtze Memory Technologies Corporation)や、半導体設計を手掛けるUnisoc(Shanghai)Technologiesなどを傘下に持つが、破産した後、事業再建に取り組む予定だとしている。また、米国政府が2020年に、Huaweiの子会社HiSiliconをスマートフォン向け半導体チップ市場から強制的に締め出したため空白が生じていたが、それをQualcommと台湾MediaTekが2021年に埋めている。

 また、TSMCの競合であったHSMC(Wuhan Hongxin Semiconductor Manufacturing Company)が、2020年末ごろに破産したという点についても言及すべきだろう。

 これらの事象が、「中国国内の堅調な半導体業界が、台湾に競争上の脅威を与え、欧州や日本にも迫る勢いを見せている」(SIA)ということを示しているようには見えない。

 SIAはレポートの最後の注釈で、「中国半導体業界の規模に関する予測は、他の市場分析とは異なる」と認めている。この点は、極めて明白だ。

 米国の市場調査会社IC Insightsのデータによると、ファウンドリー/パッケージングメーカーを除く中国のIDM(垂直統合型メーカー)および半導体設計メーカーの半導体売上高は、2020年に過去最高となる約280億米ドルに達したという。一方、同年に台湾のファブレスメーカーおよびIDMは320億米ドルの売上高を記録している。

 また、IC Insightsの計算にファウンドリーを含めると、2020年、中国の半導体サプライヤーの売上高は340億米ドルなのに対し、台湾の売上高は870億米ドルとなる。

 SIAのレポートは、中国の支配力が高まっているという主張を裏付けるように、半導体業界に新規参入する中国メーカーの“驚くべき”数について言及している。

 「2020年には1万5000社近くの中国企業が半導体企業として登録された。これらの新企業の多くは、GPU、EDA、FPGA、AI(人工知能)コンピューティング、その他のハイエンドチップ設計に特化したファブレス新興企業だ」(SIA)

 中国のハイエンドロジックデバイスの販売も加速しており、SIAによると中国のCPU、GPU、FPGA分野の合計売上高は年率128%で成長し、2015年のわずか6000万米ドルから、2020年中に約10億米ドルにまで成長したという。

 それでも、2021年は台湾の半導体分野にとってかなり良い年だったようで、すぐに中国に追い抜かれる心配はないようだ。

 TSMCの2021年の売上高は、1兆6000億台湾ドル(約570億米ドル)で、2020年から18.5%増の成長を遂げた。SMICの2021年の売上高は同39%増で54億4310万米ドルとなっている。

 これらは2022年、これまでに入手した業界データの一部だ。SIAを含む非常に多くの企業が、米国内での半導体製造を復活させるため、数十億米ドルの資金提供を議員やバイデン政権に働きかけていることから、市場調査会社らによる世界ランキングの最新の報告は特に有用になる。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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