SK hynixがPIMを開発、GDDR6にアクセラレーター統合:消費電力80%減&特定の演算速度16倍に
SK hynixは2022年2月16日(韓国時間)、同社が開発したPIM(Processing-in-Memory)技術を初めて適用した製品「GDDR6-AiM(Accelerator in memory)」のサンプルを開発したと発表した。
SK hynixは2022年2月16日(韓国時間)、同社が開発したPIM(Processing-in-Memory)技術を初めて適用した製品「GDDR6-AiM(Accelerator in memory)」のサンプルを開発したと発表した。
PIMとは、その名の通りプロセッサをメモリ内部に統合したもので、メモリとCPU/GPU間のデータ移動を低減し、消費電力の低減を実現する技術だ。その概念自体は新しいものではないが、ニーズの高まりやプロセス技術の進歩によって近年、開発が加速。SK hynixの競合であるSamsung Electronicsは2021年2月、半導体の国際学会「ISSCC」において、HBM(High Bandwidth Memory)2にPIMを埋め込んだ「HBM-PIM」を発表したほか、直近では2022年1月に、磁気抵抗メモリ(MRAM)ベースのインメモリコンピューティングのデモを発表している。
AIチップと組み合わせた技術を導入予定
SK hynixは今回の発表で、同社のPIM技術を適用した初の製品としてGDDR6-AiMのサンプルを開発したと説明している。GDDR6-AiMは、16Gビット/秒(bps)でデータ処理を行うGDDR6にアクセラレーター機能を加えたもので、同社によると一般的なDRAMの代わりにGDDR6-AiMをCPUやGPUと組み合わせた場合、特定の演算速度を16倍高速化することができるという。
さらに、動作電圧は既存のGDDR6の動作電圧1.35Vよりも低い1.25Vとなっているほか、PIMによってCPU/GPUへのデータ移動を減らすことで、消費電力も80%削減するという。同社は、「GDDR6-AiMは、機械学習、高性能コンピューティング(HPC)、ビッグデータの計算や保存に広く採用されることが期待される」としている。
同技術および製品開発の陣頭指揮を執ったSK hynixのソリューション開発責任者、Ahn Hyun氏は、「SK hynixは、独自で演算機能を持つGDDR6-AiMを用い、新しいメモリソリューションエコシステムを構築する」とコメントしている。同社は、最近SK TelecomからスピンオフしたAI(人工知能)チップメーカーSAPEONと共同で、GDDR6-AiMとAIチップを組み合わせた技術を導入する予定だ。
SK hynixは今回の発表では技術の詳細を明かしていないが、2022年2月20〜28日の日程で開催される半導体業界最大級の国際学会「ISSCC 2022」において同技術を紹介する予定だ。
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