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ワイヤレス電力伝送の基本原理(前編)福田昭のデバイス通信(348) imecが語るワイヤレス電力伝送技術(2)(2/2 ページ)

前回に続き、「IEDM 2021」の講演を紹介する。今回から、ワイヤレス電力伝送の基本原理を前後編に分けて解説する。

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誘導型(非放射型)WPTは磁界結合あるいは電界結合を利用

 前回でも述べたようにVisser氏は講演でワイヤレス電力伝送(WPT:Wireless Power Transfer)の原理を「誘導型(Inductive)WPT」と「放射型(Radiative)WPT」に大別している。ここで誘導型WPTは磁界あるいは電界の結合と電磁誘導、共振(共鳴)を要素技術として含んでおり、「非放射型(Non-Radiative)WPT」と呼ぶことも少なくない。

 「誘導型(Inductive)WPT」あるいは「非放射型(Non-Radiative)WPT」には、大別すると磁界結合方式と電界結合方式がある。またそれぞれに、共振(共鳴)回路を利用する派生方式が存在する。


誘導型WPT技術(非放射型WPT技術)の一覧。筆者の調べによる(Visser氏の講演スライドではない)[クリックで拡大]

 誘導型あるいは非放射型のWPTで実用化が最も進んでいるのは、電磁誘導方式のWPTだろう。送電側のコイルで発生させた交流磁界を受電側のコイルに通すことで、受電側コイルで電磁誘導による交流電流を発生させる。

 ポータブルやモバイルなどの持ち運びを常とする民生用機器では、充電に電磁誘導方式のWPTを採用した製品の事例が多い。洗面台や浴室などの水回りで使用する民生機器(電動歯ブラシや浴室用液晶テレビなど)は、金属電極が露出しない電磁誘導方式WPTの充電器を標準的に採用している。

 電磁誘導方式の弱点は送電側と受電側で位置を正確に合わせる必要があることと、伝送距離が極端に短いことにある。この弱点を克服したのが、磁界共振方式(磁界共鳴方式、磁気共鳴方式)のWPTだ。電磁誘導方式にコンデンサを追加して直列LC共振回路を形成したもので、コイルの相対位置が少しずれても電力を伝送できるとともに、伝送距離を長くできる。ただし送電の周波数を共振周波数に合わせなければならない、共振周波数が周辺環境によって変化する、といった課題がある。

 原理的なコストの低さが魅力なのが、電界結合方式だ。2対のコンデンサ(キャパシタ)に高周波電流を与えることで電力を伝送する。電力伝送と通信(信号伝送)を兼ねられるという長所もある。ただし、伝送距離は短く、電源電圧が高い。

(後編に続く)

⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧

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