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半導体不足の影響、新興企業にも波及チップ入手できず開発が滞る(2/2 ページ)

半導体不足はいまだに続き、解消のメドは立っていない。それどころか、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の収束も見えず、ロシアによるウクライナ侵攻が発生するなど、半導体関連のサプライチェーンが不安定になる要素は増えている。それに伴って、半導体製造の“自国回帰”の動きが進み、半導体への投資は加速している。こうした状況は、ハイテク関連のベンチャー企業にどのような影響を与えているのだろうか。

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2022年の技術トレンドと、注目の「SPAC上場」

 Uzzaman氏は2022年のトレンドについても語った。

 まずはメタバースだ。「CES 2022」でもメタバース関連の技術は数多く展示され、既に一大トレンドになっている。「中には、1週間に100時間くらいメタバースで生活している人もいるほどだ」とUzzaman氏は語る。Meta(旧Facebook)はメタバースに年間1兆円規模の膨大な投資を行っていくと表明しているが、その他にもMicrosoft、Apple、ByteDance、Amazon、Alibabaなど多数のハイテク大手やEpic Gamesなどのゲーム会社がメタバース市場に参入している。

 大手のみならず、スタートアップも健闘している。例えば2018年に設立された日本のHikkyは、VR(仮想現実)サービスの開発ソリューションを提供する企業で、2022年2月にはシリーズA資金調達を70億円で完了したと発表した。一方でUzzaman氏は投資家としての見解として、「GAFAMのような豊富なリソースを持つ大手が参入しているとなると、ベンチャー企業は同じメタバース市場で戦うのは難しくなるのではないか」、とも指摘した。

左=社名を変更してまで、メタバースへの注力をアピールしている旧Facebook/右=メタバース関連ではスタートアップの台頭も目立つ[クリックで拡大] 出所:Pegasus Tech Ventures

 エコシステムも拡大の一途をたどる。「短期間に大きく増加した。ソフトウェアエンジンの他、バーチャルな世界を作るメーカー、アバターを作成するメーカー、メタバースで取引を行うためのソリューションを提供するメーカーなど、幅広い分野でメタバース関連のエコシステムが拡大している」(Uzzaman氏)

 さらに、メタバースでの安全な取引やデジタル資産の保護といった観点から、ブロックチェーンやNFT(非代替性トークン)も、より成長していくだろうと予測した。

左=メタバース関連のエコシステム/右=急成長するNFT市場[クリックで拡大] 出所:Pegasus Tech Ventures

スタートアップが活躍する量子コンピューティング分野

 量子コンピューティングも急成長を遂げている分野の一つだ。「3〜4年前は、量子コンピュータ分野に投資しようとすると『この技術が成長し始めるまでには、あと10〜20年かかる』と言われ、懐疑的に見られることの方が多かった。だが今、同市場は急成長している」とUzzaman氏は語る。

 IDCの2021年11月の予測によれば、量子コンピューティングの市場規模は、2020年の4億1200万米ドルから、2027年には86億米ドルに成長するという。2021〜2027年にかけての年平均成長率は50.9%と高い。

 量子コンピュータ技術の開発をけん引するのは、Google、IBM、Microsoft、Amazon、Alibabaなどだ。さらにこの分野は、ハードウェアでもソフトウェアでもスタートアップの勢いが突出している。カナダD-Wave Systemsをはじめ、米Rigetti Computing、米QC Ware、米ColdQuanta、米IonQ、オーストラリアQ-CTRL、カナダ1QBitなど、注目度が高い粒ぞろいの企業が存在する。


量子コンピューティングで注目されているスタートアップの一例[クリックで拡大] 出所:Pegasus Tech Ventures

 量子コンピュータを実際に使用したり試したりできるサービスも増えている。AWS(Amazon Web Services)が提供する量子コンピューティングサービス「Amazon Braket」や、Microsoftの「Azure Quantum」、IBMの量子コンピュータシステム「IBM Quantum System One」などがある。Uzzaman氏は「量子コンピューティングサービスが、ここまで使えるようになるとは思っていなかった」と語る。

「SPAC上場」を果たしたRigetti Computing

 注目すべき動きもある。Rigetti Computingが2022年3月2日(米国時間)、SPAC(特別買収目的会社)上場を果たしたのだ。

 SPACは、その名の通り買収を目的として設立された企業で、事業を行わない、いわば“空箱”企業だ。SPAC上場は、まずこのSPACが“空箱”の状態で上場し、その後ベンチャー企業などを買収することで、そのベンチャー企業が実質的に上場できる仕組みになっている。従来型のIPO(新規株式公開)に比べ、スピーディかつ簡単に上場できるため、近年は特に米国でSPAC上場件数が急増している。

 Rigetti Computingの場合、Supernova Partners Acquisition Company IIというSPACに買収されることで、実質的にNASDAQに上場。これによりRigetti Computingは、2億6175万米ドルを獲得することになった。

 Pegasus Tech Venturesは、Rigetti Computingに最初に投資した企業でもある。そのPegasus Techが同様に初期段階から投資しているスタートアップの1社がQC Wareだ。量子コンピュータ向けのOSを手掛ける。

Pegasus Tech Venturesが初期から投資していたRigetti ComputingとQC Ware[クリックで拡大] 出所:Pegasus Tech Ventures

 なお、量子コンピューティング関連の日本のスタートアップについてUzzaman氏は「スタートアップはまだ少なく、これから力を入れていってほしいところ」だと述べる。一方で、大手ではNTT、NEC、日立製作所など開発を加速している企業も多い。

 「これらの大手企業には、グローバルのベンチャー企業と連携していってほしい。上記で挙げた、量子コンピューティング関連で注目されているスタートアップには、残念ながら日本企業からの資金が投入されていない。現時点では、量子コンピューティング関連のスタートアップはほとんどが米国や英国だ。日本の大手企業には、自前主義を捨て、スタートアップとの上手な連携も視野に入れてほしい」(Uzzaman氏)

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