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半導体/エレ業界へのロシア ウクライナ侵攻の影響について考える大山聡の業界スコープ(51)(2/2 ページ)

今回は、あまり好ましい話題ではないが、ロシアがウクライナへの軍事侵攻という暴挙が世界半導体および、エレクトロニクス業界にどのような影響を与えうるか、について考えてみたい。

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無関係でいられる産業など存在しない

 今回の暴挙については、ターゲットとなったウクライナの国民はもちろん、納得のできない形で兵役に借り出されたロシア人たちも含めて、多くの人命が危険にさらされることが最大の問題だ。そして、世界中の国や地域がこの暴挙に制裁を加える代償として、世界経済が打撃を受けることも極めて大きな問題になりつつある。この問題と無関係でいられる産業など存在しないだろう。エレクトロニクス産業も例外ではないし、結果的に半導体需要にも影響が現れることは間違いない。

 2021年12月および2022年1月の本連載で筆者は「半導体市場の見通しは、2022年の年央あたりで潮目が変わる」「不足問題は年後半には終息する」という私見を述べてきた。半導体不足はコロナ禍が引き起こしたサプライチェーンの問題、さらには不足を懸念した大手ユーザーによる在庫の積み上げなどによって、世界中のユーザーの手元に十分な半導体が届いていないことが原因だ。これらが解消されれば潮目は変わる、という主張である。しかしファウンドリー業界ではほぼすべてが現在100%の稼働率で動き、受注残を見る限り2022年末以降までこの状況は変わらない、というコメントが多数を占めている。筆者の意見とは対立しているのが現状だが、世界経済の見通しが下振れたらどうなるだろうか。

 もちろん筆者としても、今回の軍事侵攻を当初から予測していたわけではない。こんな理不尽なことが原因で世界経済が打撃を受けるなどとんでもないことだと思っている。しかし現実問題として、軍事侵攻がいつ収束するのか、有事の世界経済をいつ平常モードに戻せるのか。平常モードに戻れれば、今度は復興需要も含めて世界経済は活気を帯びる可能性も高まるが、現時点では強気な景気予測を立てられない。有事の際に必要とされる機器や備品の需要が優先されるため、PC、スマホ、クルマなどの需要は下振れる可能性が高いのだ。

来たるポジティブ局面に備えたい

 2020年は年初からコロナ禍に悩まされ、世界中が混乱に陥った。コロナ禍はまだ収束したとはいえないが、各国や地域がそれぞれ対処法を学び、この混乱を最小限に抑えながら経済活動を行っていると言えるだろう。われわれは制限付きの行動を強いられながら、この収束をひたすら待ち続けているわけだが、そのタイミングで引き起こされた軍事侵攻である。われわれ日本人の多くは、直接的な被害を受けていないだけましかもしれないが、間接的な影響、特に経済的な影響からは逃れられない。せめて、コロナ禍が収束したらどんな需要に期待できるか、軍事侵攻が収束して経済が復興モードに入ったらどんな需要に期待できるか。そんなことを考えて、来たるポジティブ局面に備えた準備をしておきたいものである。

筆者プロフィール

大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表

 慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。

 1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。

 2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。

 2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。


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