家電品などの補修用部品需要をAIで高精度に予測:保守サービスの品質向上を目指す
三菱電機は、「Maisart(マイサート)」と呼ぶ独自のAI(人工知能)技術を用いて、家電製品などの補修に用いる部品需要を高い精度で予測する技術を開発した。保守サービスの品質向上を目指し、2022年度から家庭用電化製品、住宅設備の部品PSI管理業務部門で適用を始める。
予測に至った根拠も提示
三菱電機は2022年3月、「Maisart(マイサート)」と呼ぶ独自のAI(人工知能)技術を用いて、家電製品などの補修に用いる部品需要を高い精度で予測する技術を開発したと発表した。保守サービスの品質向上を目指し、2022年度から家庭用電化製品、住宅設備の部品PSI管理業務で適用を始める。
家庭用電化製品や住宅設備など量産製品を手掛けるメーカーは一般的に、消耗したり故障したりした部品を交換するため、補修用部品を在庫として用意している。確保しておく数量についてはこれまで、過去の出荷数量実績や季節変動要因などを基に決めていた。しかし、予測誤差もあり在庫に過不足が生じることもあったという。
そこで三菱電機は、部品種ごとに特徴のある需要傾向をAIに学習させておき、予測したい部品に似たクラスタをAIが自動で選び出し、今後の出荷数量を高精度に予測する手法を開発した。
具体的には、既存部品の出荷数量実績から、AIが「X-Means法」を基に、最大20パターンまで自動でクラスタリングする。その上で、予測したい部品と相関関係の高いクラスタをAIが認識し、今後の出荷数量を高い精度で予測する。AIの予測結果については、その根拠も提示されるため、利用者は納得してAIを活用できるという。
三菱電機によれば、家電製品などの補修用部品のPSI(Production、Sales、Inventory)管理において、これまで部品ごとに行ってきた需要予測と比べ、AIを活用したことで予測精度が25.6%も改善されたという。
三菱電機は今後、家庭用電化製品・住宅設備の部品PSI管理業務以外にも、開発した技術を適用していく。さらに、国内外の気象観測データなどをAIに組み込むことで、需要予測の精度をさらに高めていく計画である。
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