欧州特許出願数は日本が世界3位、半導体が急伸:EPOが2021年のレポートを発表
欧州特許庁(EPO:European Patent Office)は2022年4月5日(ドイツ時間)、「2021年EPO特許レポート」を発表した。それによると、EPO全体では、2021年に18万8600件の特許出願があり、2020年比で4.5%と過去最多を記録した。
欧州特許庁(EPO:European Patent Office)は2022年4月5日(ドイツ時間)、「2021年EPO特許レポート」を発表した。それによると、EPO全体では、2021年に18万8600件の特許出願があり、2020年比で4.5%と過去最多を記録した。
出願件数が最も多い分野はデジタルコミュニケーションで、1万5400件と、2020年比で9.4%増となった。2位は医療技術(1万5321件/同0.8%増)、3位はコンピュータ技術(1万4671件/同9.7%増)だった。また、半導体は3748件と数は比較的少ないものの、前年比で21%増とこれまでにない伸びを見せたという。これらの結果から、EPOは「パンデミックのさなかで、分野や産業を超えた『デジタル革命』が鮮明になった」と分析する。さらに、医薬品やバイオテクノロジー関連の特許出願も引き続き活発で、ワクチンやヘルスケア分野における高い技術革新を裏付けているとする。
国別では、米国が4万6533件で首位。2位はドイツで2万5969件、3位は日本で2万1681件だった。日本の2万1681件は、前年比で1.2%減(273件の減少)となる。これについてEPOは、「日本企業がより成熟した産業に強い一方で、2021年のEPO全体における出願数伸長の主な要因となったデジタル技術やヘルスケア技術においては、出願活動が他と比べて、比較的控え目だったことが挙げられる」と分析している。
企業別では、トップがHuawei、2位がSamsung Electronics、3位がLG Electronicsと中韓が強さを見せつけた。
とはいえ、欧州特許出願総数の11.5%を占める日本は、アジア地域では1位であり、EPOへの特許出願が引き続き活発な国だといえる。
半導体の出願数が過去5年間で最多に
EPOは、日本の欧州特許出願件数の上位15分野も発表している。それによると、1位は「電気機械・エネルギー」で1830件だった。特に、クリーンエネルギー技術関連の特許が多数出願された。2位は「デジタルコミュニケーション(デジタル通信関連)」で1417件。同分野では過去最多の出願件数を記録し、3位の「運輸」部門(1379件)を初めて上回った。
上位15の技術分野のうち最も件数が伸びたのは半導体で、前年比20.9%増となる597件だった。出願数(597件)は過去5年間で最多、伸び率(20.9%増)は過去10年間で最高となった。半導体分野において、日本企業の出願数は全体の16%を占めている。日本を上回ったのは韓国(18%)および米国(19%)だった。
さらに日本の出願数は、以下の4分野で世界1位となった。
- 高分子化学、高分子材料(892件)
- 材料・冶金(861件)
- 繊維・製紙機械(612件)
- 表面技術、コーティング(597件)
企業別では、ソニーが2年連続で、EPOにおける世界8位の特許出願者となった。同社は2019年は9位、2018年は11位だった。日本企業のみに限ると、ソニーが1465件でトップ、パナソニック(781件)、日立製作所(774件)と続く。EPOの特許出願件数の上位50社のうち、日本企業は7社(ソニー、パナソニック、日立製作所、キヤノン、三菱電機、富士フイルム、NTTドコモ)だった。
2021年 EPO 特許レポートの詳細はこちらで見ることができる。
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