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東北大、2種類の一次元半導体でヘテロ接合に成功原子サイズの半導体デバイス実現へ

東北大学は、ハロゲン架橋金属錯体と呼ばれる2種類の一次元半導体を用い、原子レベルで「ヘテロ接合」することに成功した。原子サイズの半導体デバイスを実現できる可能性を示した。

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「Ni錯体」と「Pd錯体」をエピタキシャル成長法で接合

 東北大学理学研究科の脇坂聖憲助教や高石慎也准教授、山下正廣名誉教授らによる研究グループは2022年4月、ハロゲン架橋金属錯体と呼ばれる2種類の一次元半導体を用い、原子レベルで「ヘテロ接合」することに成功したと発表した。原子サイズの半導体デバイスを実現できる可能性を示した。

 ハロゲン架橋金属錯体は、金属イオンとハロゲン化物イオンが交互に、一直線に並んだ鎖構造を作る。金属イオンに「配位子」が結合することで構造が安定。水素結合による「シート構造」とファンデルワールス力による「積層構造」を作ることで、単結晶ができるという。

 物質的には三次元構造となるが、層間と鎖間の相互作用が極めて弱く、電子の通り道は金属とハロゲンの鎖方向だけに限定される。このため、物性的には「一次元電子系」と見なすことができる。このような物質は「擬一次元電子系物質」と呼ばれている。

 今回採用した2種類のハロゲン架橋金属錯体は、金属に「ニッケル」あるいは「パラジウム」を用いた。ニッケルを用いたハロゲン架橋金属錯体(Ni錯体:[Ni(chxn)2Br]Br2)は、ハロゲン化物イオンがニッケル間の中点に位置する「モット・ハバード(MH)状態」となる。一方、パラジウムを用いたハロゲン架橋金属錯体(Pd錯体:[Pd(chxn)2Br]Br2)は、ハロゲン化物イオンの位置が中点からずれる「電荷密度波(CDW)状態」となる。この2種類をエピタキシャル成長法(電気化学的酸化により結晶が成長する方法)によって接合した。


Ni錯体(左)とPd錯体(右)の構造。配位子には1R、2R-ジアミノシクロヘキサン(chxn)を用いた 出所:東北大学

 研究グループは、ヘテロ接合の構造を走査型トンネル顕微鏡で確認した。Ni錯体の領域はMH状態のため、5Å(0.5nm)間隔でニッケル三価の電子受容サイトが輝点として現れた。Pd錯体の領域は、CDW状態(Pd(II)/Pd(IV))のため10Å(1nm)間隔でパラジウム四価の電子受容サイトが現れた。ヘテロ接合の領域はMHとCDWから変調した状態が、約2.5nmにわたって観測された。この状況は、「2種類の一次元鎖が原子レベルで接合していることを示している」という。


Ni錯体とPd錯体によるヘテロ構造の顕微鏡写真(左)と走査型トンネル顕微鏡像(中央)、右は走査型トンネル顕微鏡像の矢印位置における強度プロファイル。上段はMH状態、中段はCDW状態、下段はヘテロ接合の領域 出所:東北大学

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