AMDの2022年売上高、前年比60%増と予測:Xilinx買収や旺盛な需要が後押し
AMDは、サーバ向けプロセッサの需要が力強く伸びていることや、FPGAメーカーXilinxを買収したことなどが後押しとなり、2022年の年間売上高が60%増加する見込みであることを明らかにした。
AMDは、サーバ向けプロセッサの需要が力強く伸びていることや、FPGAメーカーXilinxを買収したことなどが後押しとなり、2022年の年間売上高が60%増加する見込みであることを明らかにした。
AMDのCEO(最高経営責任者)であるLisa Su氏は、2022年5月に開催したアナリスト向けのカンファレンスコールにおいて、「AMDは、高い有機的成長をベースに、Xilinxを買収したことによって複数のエンドマーケットにおける需要増加も見込まれることから、2022年の年間売上高が前年比で約60%増加すると予測している。2022年初めの予測では約31%増としていたため、大幅な増加となる」と述べている。
半導体業界では現在、サプライチェーン問題や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻などが原因となって成長が抑制されている。こうした中、AMDが今回発表した強気の見通しは、異彩を放っていると言えるだろう。AMDにとって最大のライバルであるIntelは、2022年の年間売上高を、前年比2%増となる760億米ドルと予測しているという。
AMDはIntelに対し、PC/サーバ向けCPU市場におけるシェアを力強く拡大しながら、Intelが最近自社製品を投入し始めたばかりのGPU市場をはじめとする新市場にも進出しているところだ。
AMDのサーバ用プロセッサの年間売上高は、過去10四半期のうち8四半期において、2倍以上の成長を達成している。ここで際立つのが、クラウドやエンタープライズ、HPC(High Performance Computing)などの顧客企業に向けた「EPYC」プロセッサの需要が拡大しているという点だ。AlibabaやAmazon、Baidu、Microsoft、Googleなどのハイパースケーラーがインフラ導入を拡大していることを受け、クラウド関連の年間売上高は2倍以上に増加している。
AMDは2022年第1四半期に、Xilinxの買収を完了させると同時に、Pensandoを買収する計画も発表している。Su氏は、「Xilinxは、業界トップのFPGAおよびアダプティブコンピューティングソリューションのプロバイダーであり、AMDの技術、製品ポートフォリオの大幅な拡充に貢献している」と述べている。
AMDはPensando買収により、データセンター向けの製品構成を拡充することができると期待しているようだ。IBMやHPE、Microsoft、Oracle、Goldman Sachsなどの主要顧客が導入している、DPU(Data Processing Unit)やソフトウェアスタックなどを追加できるようになるとみられる。
PC市場でのCPU需要は低迷傾向に
しかしAMDは、CPU分野の需要が低迷傾向にあることを認めている。
Su氏は、「PC市場はこれまで複数四半期にわたり、過去最高に近い出荷台数を達成してきたが、現在は軟化傾向に入っている。しかし、当社は今後も、強力な成長のチャンスが見込まれるプレミアム市場やゲーム市場、量産市場などをターゲットに定めることで、引き続きクライアント分野の売上高シェアを獲得していきたい考えだ」と述べる。
AMDの成功は、主要半導体サプライヤーであるTSMCを頼みの綱にしている。AMDは2022年第1四半期に、3次元積層技術を活用するEPYCの詳細を公表した。L3キャッシュを積層する「3D V-Cache」技術を活用する第3世代EPYCプロセッサで、Cisco SystemsやHPE、Lenovo、Supermicroなどが、同プロセッサを採用したサーバを発表している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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